2001 Fiscal Year Annual Research Report
出漁漁民の移住地域において開発された移住漁業の漁撈技術に関する民俗学的研究
Project/Area Number |
11610316
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
野地 恒有 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (60242898)
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Keywords | 移住 / 出漁 / 漁業 / 民俗学 / 桜田勝徳 |
Research Abstract |
本研究では,出漁漁民が移住した漁村や彼らの出身村を調査することによって,彼ら(移住漁民)が,定住化に向けて,移住後の生活を構築させてゆく方法について,魚携技術の開発という観点から民俗学的に研究を進めた。高知県須崎町,島根県大社町,和歌山県雑賀崎における漁民の出漁と移住に関する調査と資料収集を行った。また,これまでおこなってきた調査資料をもとに,1930年代後半に行われた民族学者桜田勝徳の「出漁と漁業移住」研究の検討を行った。桜田が「出漁と漁業移住」でとりあげた移住地域について,本調査結果からまとめれば,岩手県宮古市の宮古湾へ,越中衆はイカ釣り業を通して北海道を経由して定住し,イカ釣り漁により移住後の生活を組み立てた。さらに,移住後の漁業をイカ釣り漁からマグロの流し網,サケマス漁,マグロ延縄と展開させていった。それらの漁業では,地元の漁民を乗組員とすることによって移住先の在来漁業にも影響を与えた。また,宮古では越中講の形式や善宝寺の勧請がみられた。佐賀県伊万里市漁港では,昭和10年代に底引き網漁の根拠地が長崎県南松浦郡玉之浦から移ってきて,アワセンの移住がみられた。しかし,昭和10年代後半には,その根拠地もさらに福岡港へ移っていった。現在,伊万里市漁港にアワセンの船主や乗組員の移住はみられるが,彼らが移住先の在来漁業へ影響を与えることはなかった。
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