2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610323
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
徳丸 亜木 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (90241752)
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Keywords | 地神盲僧 / 地神祭 / 虫送り / 五郎王子譚 / 地霊 / 水神 / 死霊 / 落城伝説 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の最終年度にあたり、前年までの調査で収集した映像資料・聞き書き資料・文献資料の整理、分析を中心に作業を進めた。 一、映像資料の整理に関しては、従前より継続しているビデオ撮影により記録した地神 盲僧祭祀儀礼(春期の地神祭と夏期の虫送り儀礼)を対象として、その編集作業を実施した。また、地神盲僧から神官へとその司祭者が移行した地神祭についても映像記録を作製し、両者の対比が可能となる様に留意した。この編集映像を、報告書にDVDディスクの形で添付する事とした。 二、地神盲僧の祭祀儀礼に関しては、特に、共同体単位で行われる春の農事開始に際しての予祝儀礼でもある地神祭に示される信仰的世界観について、山口県を中心とした数集落の調査資料から分析を試みた。地神盲僧が行う地神祭においては、四方(東西南北)四節(春夏秋冬)と「中央」とからなる時空間の構成が明確に示されており、これは、地神盲僧が伝える「五郎王子譚」(地神としての五郎王子の成立譚)に示される世界観を儀礼において表出せしめたものと理解される。また、「中央」として選定されるのは、集落の氏神社など家郷社会の中心となる信仰表象である場合もあるが、集落の耕地に水を送る位置にある水源祭祀の「森」が選ばれる場合もある。後者の場合、地域住民が有する郷土に対する歴史認識とも対応し、「森」は、地中に眠るとされる戦国期以降の戦死者などの死者霊を集合的に供養・慰撫する信仰表象ともされる傾向が見られる。そこには地神盲僧を地霊・水神・死霊などの統括的な供養、慰撫をなし得る宗教者としての性格が示されている。また、現在、伝承されている「森」にまつわる死霊祭祀の伝承や、地域の落城伝説などが地神盲僧の関与の下、その活性化と再構成が計られて来たものと想定される.
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