1999 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化の中のアラブ・ムスリム世界 ―人類学的アラブ研究の展望―
Project/Area Number |
11610324
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大塚 和夫 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (70142015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷹木 恵子 桜美林大学, 国際学部, 助教授 (60211330)
小杉 泰 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (50170254)
堀内 正樹 広島市立大学, 国際学部, 教授 (10209281)
清水 芳見 中央大学, 総合政策学部, 助教授 (10216111)
臼杵 陽 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (40203525)
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Keywords | アラブ / イスラーム / 人類学 / グローバル化 / ムスリム聖者 / イスラーム主義 / オリエンタリズム / 植民地主義 |
Research Abstract |
本年度は2回の研究会を東京および広島で開催した。当初計画通り、人類学者の側(大塚、堀内、清水、奥野)が、これまでのアラブ世界の調査の成果と今後の見通しに関する報告を行った。その中でとくに話題になったのは、これまでの人類学的イスラーム研究の主要テーマの一つであったムスリムの「聖者信仰」をめぐって、果たしてこの信仰の対象となっている人物を「聖者」と呼ぶことがどこまで妥当かという問題であった。「聖者」を「偉人」と言い換えようという堀内提案をめぐって、賛否両論がとびかった。簡単に結論が出せる問題ではなかったが、従来の研究を振り返り、今後の展望を探る上で意義深い議論であった。また、ゲストとして発表してもらった中生氏(和光大学)は、戦前・戦中の日本人による、中国などにおけるイスラーム研究の在り方を批判的に検討した。アラブ研究とは地域的に異なる内容とはいえ、現在の人類学一般において盛んに議論されている「植民地主義」や「オリエンタリズム」の問題と密接に関わるテーマである。とりわけ「オリエンタリズム」に関しては、中東研究者としては、常に念頭においてみずからの調査・研究を進めなければならない重要な問題であり、その点でもきわめて参考になった。また、今年度文献として収集したのは、現在では稀覯本となっている初期オリエンタリストの著書、ならびに今世紀前半から中葉にかけてのイスラーム主義運動に関わる資料集などであり、歴史人類学的研究にとってきわめて有益な図書資料である。来年度は、人類学サイドの未発表者と地域研究サイドからの報告会を行い、大学院生にも積極的に参加してもらい、人類学的アラブ研究のさらなる展開を試みる。
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Research Products
(26 results)
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[Publications] 大塚 和夫: "ポリティカル・エコノミー論の射程 ―グローバル/ローカルの対立図式を超えて"国際交流. 83号. 20-27 (1999)
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[Publications] 大塚 和夫: "宗教復興の背後にあるもの―オブジェクト化されたイスラームをめぐって"大航海. 29. 81-89 (1999)
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[Publications] 大塚 和夫: "二人のエドワードと二〇世紀人類学 ―当世エジプト人の風俗と慣習とオリエンタリズムのはざまで―"栗本英世・井ノ瀬久美恵編 植民地経験. 346-365 (1999)
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[Publications] 大塚 和夫: "スワヒリ・コーストとネットワーク―民族学者のまなざし(9)"季刊民族学. 90. 104-107 (1999)
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[Publications] 大塚 和夫: "現在の人類学―民族学者のまなざし 最終回"季刊民族学. 91. 110-113 (2000)
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[Publications] 奥野 克己: "中東ムスリム社会の食のあり方―酒・豚・共食の思想と実践"講座 人間と環境6 ― 食の倫理を問う. (印刷中). (2000)
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[Publications] 鷹木 恵子: "北アフリカ・マグリブ地方の文化人類学的研究―その成果と動向"地域研究 入門(4)中東・イスラム社会研究の理論と方法. 142-194 (2000)
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[Publications] 鷹木 恵子: "「さまざまなイスラーム」への視点"国際人流. 第141号. 24-25 (1999)
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[Publications] 鷹木 恵子: "地理的空間と歴史的時間を移動するベドウィン"地中海学会月報. 224. 3-3 (1999)
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[Publications] 鷹木 恵子: "書評 窪田祥子・八木佑子編著 社会変容と女性"民族学研究. 64-2. 264-265 (1999)
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[Publications] 鷹木 恵子: "書評 福井・赤坂・大塚著 アフリカの民族と歴史"民族学研究. 64-3. 385-386 (1999)
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[Publications] 清水 芳見: "アラブ・ムスリムの民間信仰に関する研究の動向―ヨルダンの場合―"文化人類学講義. 30-32 (1999)
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[Publications] 小杉 泰: "変革のイスラーム―文明再生の論理と構想"木村 雅昭編 民族と国家を問いなおす. 273-296 (1999)
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[Publications] 小杉 泰: "序論 現代の宗教復興と国際社会"国際政治. 121. 1-11 (1999)
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[Publications] 小杉 泰: "イスラーム世界の東西―地域間比較のための試論"東南アジア研究. 37-2. 123-157 (1999)
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[Publications] 赤堀 雅幸: "エジプトの社会福祉"仲村・一番ヶ瀬他編 世界の福祉第10巻アフリカ・中南米. (印刷中). (2000)
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[Publications] 臼杵 陽: "犠牲者としてのユダヤ人/パレスチナ人を超えて"思想. 907. 125-244 (2000)
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[Publications] 堀内 正樹: "「見えざるユダヤ人」とバザール経済"国際交流. 83. 63-69 (1999)
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[Publications] 堀内 正樹: "現代モロッコの廟参詣―「聖者」を「偉人」とする提案を添えて―"地中海世界史・第4巻・巡礼と民衆信仰. 319-348 (1999)
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[Publications] 鷹木 恵子: "北アフリカのイスラーム聖者信仰―チュニジア・セダダ村の歴史民族誌"刀水書房. 412 (2000)
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[Publications] 鷹木 恵子: "チュニジアのナツメヤシ・オアシス社会の変容と基層文化―ジェリード地方とネフザーワ地方の比較研究"東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所. 166 (2000)
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[Publications] 清水 芳見: "(共編著)文化人類学講義"八千代出版. 290 (1999)
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[Publications] 小杉 泰: "(編・著)東南アジア研究第37巻第2号 東南アジアのイスラーム"京都大学東南アジア研究センター. 299 (1999)
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[Publications] 赤堀 雅幸: "(共著)イスラム世界第55号 イスラームと婚姻"日本イスラム協会 (印刷中). (2000)
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[Publications] 臼杵 陽: "原理主義"岩波書店. 143 (1999)
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[Publications] 臼杵 陽: "世界史リブレット52 中東和平への道"山川出版社. 90 (2000)