2000 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化の中のアラブ・ムスリム世界-人類学的アラブ研究の展望
Project/Area Number |
11610324
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大塚 和夫 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (70142015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷹木 恵子 桜美林大学, 国際学部, 助教授 (60211330)
小杉 泰 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (50170254)
堀内 正樹 広島市立大学, 国際学部, 教授 (10209281)
赤堀 雅幸 上智大学, 外国語学部, 助教授 (20270530)
臼杵 陽 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (40203525)
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Keywords | アラブ / 中東 / イスラーム / ムスリム / 社会・文化人類学 / グローバル化 / 地域研究 / 歴史人類学 |
Research Abstract |
本年度は2回の研究会を京都および福岡で開催した。当初の計画通り、京都では昨年度発表をしなかった人類学者の側(鷹木、赤堀)が、福岡では地域研究・歴史学研究者の側(臼杵、小杉、大稔)が発表を行った。京都での研究会では、鷹木が「マグリブ諸国における女性労働とマイクロ・クレジットの広がり」というタイトルで発表を行い、これまで比較的研究が手薄であったアラブ女性の家内労働、さらにグローバル化の流れの中で彼女たちの生産物が「商品化」されていく過程と、そこに小額の資金を貸与するマイクロ・クレジットの普及の実態をマグリブの例を中心に話した。人類学がこれから開拓すべき新しい研究分野として、質疑応答が盛り上がった。赤堀は、自分がこれまで行ってきたアラブ世界での調査・研究を回顧し、中東(地域研究)と人類学的アプローチを総合する形で今後の研究の展望を提示した。赤堀が試みようとする地域研究や歴史人類学と社会・文化人類学的アプローチの協同の可能性こそ、福岡での研究会でのテーマであった。臼杵はイスラエル・アラブの事例研究を通して文献資料と現地調査の統合のあり方を模索し、小杉は地域研究プロパーの問題意識を率直に人類学サイドに提示し、大稔は14世紀の歴史的事例を使いながら人類学的理論の取り込みの可能性を議論した。中東を研究する人類学者が、ますます地域研究や歴史的視点との協力を行わなければならない現状を改めて痛感した研究会であった。また、大塚が海外出張(エジプトなど)を行い、カイロにおける衣食住などの近年の変容のあり方を具体的に確認した。資料収集の面では、British Journal of Middle Eastern Studiesのバックナンバー(全26巻)とEncyclopaedia Judaica(本巻16、別巻2)を購入し、東京都立大学に納入した。前者は英国を代表する学術誌であり、後者はアラブ世界を研究する際にその地域が必要不可欠なユダヤ人に関する定評のある百科事典である。
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Research Products
(21 results)
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[Publications] 大塚和夫: "Sport and Islamic World"Echoes of Peace. 60. 9-10 (2000)
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[Publications] 堀内正樹: "「モロッコの音文化-イスラームと音の関係について」"民族學研究. 65・1. 25-41 (2000)
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[Publications] HORIUCHI Masaki: "Minstrel Tradition of Berber-speaking People in Morocco : Examples of poem-song of Rais in Sous region"Mediterranean World. XVI. (2001)
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[Publications] HORIUCHI Masaki: "Bedouin Society in the Sinai Peninsula"Senri Ethnological Studies. (印刷中). (2001)
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[Publications] HORIUCHI Masaki & Ahmad al-HACHIMI: "Hiwar Maghribi Yabani hawla Islam fi Sus bi-l-Maghrib"日本中東学会年報. 16(印刷中). (2001)
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[Publications] 小杉泰: "イスラームと中東域内政治"国際問題. 487. 2-15 (2000)
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[Publications] 小杉泰: "宗教と近代国家をめぐって"総合研究開発機構・中牧弘允 編 現代世界と宗教. 15-24 (2000)
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[Publications] 小杉泰: "現代レバノンにおける宗派制度とアイデンティティ"総合研究開発機構・中牧弘允 編 現代世界と宗教. 113-130 (2000)
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[Publications] 小杉泰: "現代の国際社会とイスラーム世界-21世紀へ向けて"立命館言語文化研究所. 11. 3-20 (2000)
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[Publications] 鷹木恵子: "イスラームにおける「知」の在り方と音文化"民族学研究. 65巻1号. 9-24 (2000)
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[Publications] 臼杵陽: "イスラエルのアイヒマン裁判-イスラエル現代史における意味"内海愛子・高橋哲哉 編 戦争犯罪と性暴力. 154-175 (2000)
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[Publications] 臼杵陽: "宙吊りにされた人々-イスラエルのアラブ"稲賀繁美 編 異文化理解の倫理に向けて. 41-58 (2000)
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[Publications] 大稔哲也: "カイロの庶民街から見た湾岸戦争"外交フォーラム. 138. 54-55 (2000)
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[Publications] 大稔哲也: "イスラーム世界の参詣-聖者とスーフィズムを視野に入れつつ-"岩波講座 世界歴史10 イスラーム世界の発展. 149-180 (2000)
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[Publications] 赤堀雅幸: "遊牧民と文明-古代メソポタミアの牧人たち"松井健 他 編 NHKスペシャル四大文明 メソポタミア. 205-212 (2000)
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[Publications] 赤堀雅幸: "イスラームと婚姻-伝統と変容"イスラーム世界. 55. 47-72 (2000)
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[Publications] 赤堀雅幸: "シリア・アラブ共和国アレッポ県キスク村、とくにキスク・シャマリーに関する社会調査予備報告"オリエント. 43・2(印刷中). (2001)
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[Publications] 赤堀雅幸: "書評 鷹木恵子著『北アフリカのイスラーム聖者信仰-チュニジア・セダダ村の歴史民族誌』"オリエント. 43・2(印刷中). (2001)
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[Publications] 大塚和夫: "近代・イスラームの人類学"東京大学出版会. 309 (2000)
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[Publications] 大塚和夫: "イスラーム的-世界化時代の中で"日本放送協会出版. 297 (2000)
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[Publications] 小杉泰 他(編): "Quira'at fi al-Fikr al-Islami al-Siyasi"Amwaj. 343 (2000)