2000 Fiscal Year Annual Research Report
近代的福祉システムと伝統的相互扶助-タイと日本の比較
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11610325
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
馬場 雄司 三重県立看護大学, 看護学部, 助教授 (10238230)
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Keywords | 福祉 / 高齢者 / 文化伝承 / 相互扶助 / 老人クラブ / アジア社会 |
Research Abstract |
本年度は、昨年行った三重県での実地調査の補足調査と北タイ、ナーン県における「高齢者クラブ」など高齢者の活動の調査を行った。 (1)三重県における高齢者の活動の調査。三重県老人クラブ連合会の活動を概観し、文化伝承活動の盛んな老人クラブもしくは団体の例を調査した。更に三重県全体の傾向を踏まえ、昨年行った、北牟婁郡海山町H地区における人類学的調査をもとに、同地区において更にインテンシヴな調査を行った。そこでは、老人クラブの活動への参加の他、医療機関など公的サービスの実態、高齢者の宗教への関わり、浜辺の小屋などインフォーマルな溜まり場の実態、文化伝承における高齢者の役割について、現場での聞き取りによって明らかにした。海山町H地区は、漁業の衰退を背景とした過疎化・高齢化、伝統的相互扶助機能及び伝統文化の衰退の中、老人クラブの活動は女性を中心に活発である。ただし、海辺の溜まり場(男性)や商店(女性)など公的に認知されない様々な活動がある点にも注目すべきと思われた。 (2)北タイ、ナーン県における高齢者クラブの活動に関する調査。まず、ナーン県全体国立ナーン病院の高齢者支援活動に関する資料収集及び間き取り、ナーン市内高齢者クラブ会長、ナーン県各郡の高齢者クラブ連合会長への聞き取りを行う。更に県全体の傾向を踏まえ、ターワンパー郡パーカー区においてインテンシヴな調査を行った。同区は、報告者の長年の調査地でもあり、調査はこれまでの研究成果を踏まえて行われた。高齢者クラブの活動への参加及び聞き取り、「高齢者伝統音楽クラブ」の活動への参加及び聞き取りを中心とし、高齢者の新たな相互扶助、娯楽のシステムの導入と同時に、次世代への文化伝承の動きがみられた。 以上の調査をもとに近代的「福祉」のあり方と伝統的相互扶助のあり方の相互作用を踏まえたアジア社会の「福祉」のあり方をモデル化するための基礎資料とするべく報告書を作成した。
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Research Products
(2 results)