1999 Fiscal Year Annual Research Report
俄(にわか)研究-近畿・東海・北陸・九州地方の重点調査を中心に-
Project/Area Number |
11610326
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Research Institution | Kochi Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 恵里 高知女子大学, 文化学部, 教授 (80128793)
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Keywords | 俄 / 茶番 / 作りもの / 祭り |
Research Abstract |
11年度は準備段階と位置づけ、次の3点を研究実施計画にあげたので、これに照らし、各々実績の概要を記したい。 1.パソコン導入:俄に関する情報処理と公開を目的とする。文献資料を順次データ化しつつあるが、デジタルカメラ・ビデオをはじめ操作方法を併せて学習中である。 2.近世・近代の俄文献調査:近世では大東急記念文庫・大阪府立中ノ島図書館朝日文庫で貴重書を種々閲覧し、中期から幕末にいたる俄の本の書誌的変化とともに酒肴の芸としての在り方を確認しつつある。名古屋市立鶴舞図書館で高力種信の諸著作に接したことが収穫であった。高力は絵と文によって正確な記録を心がけた人で、なかでも祭りに関わる記述は詳細かつ具体的である。尾張各地で行なわれた「馬の塔」という祭り習俗における「本馬」と「俄馬」や天王祭の「俄思ひつき」の作りものから、寸劇としての俄以前の俄の概念を示唆されているところである。また近代では主に、国会図書館所蔵の資料により近代の俄の様相の一端を把握することができた。日清戦争を契機に俄を冠した刊行物の中身に質的変化がある。明治27-28年刊行の『支那つぶし』『日清戦争にわか』などは、25年の『滑稽茶番』のように近世幕末の俄の種本の系に立ちながら、とりあげる対象が土地の変事をはなれて日清戦争という国家の〈大変〉に向かっている。川上音二郎の新派や学武廼家五郎の新喜劇創出を可能にした土壌があろう。 3.美濃周辺の実地調査:戦後まもなくまで俄を行なっていた土地の所在は確認できたが、時間の都合で実地調査にはいたっていない。上の名古屋とその周辺の調査ともに今後の課題となった。
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