2000 Fiscal Year Annual Research Report
近世期以降における和人とアイヌ民族の文化接触による水神信仰の変容について
Project/Area Number |
11610333
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
舟山 直治 北海道開拓記念館, 事業部, 学芸員 (90181445)
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Keywords | 水神 / 川祭り / 和人 / アイヌ / ペットルン・カムイ / ワッカ・ウシ・カムイ / 文化接触 / 北海道 |
Research Abstract |
北海道西南部の水神、特に禊ぎなど川祭りの儀礼を含んだ信仰形態は、17世紀以降において北海道移住者である和人が、北前船ルートにある移住以前地である近畿・北陸地方から松前へ伝承した事例のひとつである。したがって調査対象地は、北海道、近畿・北陸地方である。さらに北海道は南西部だけではなく、石狩川、天塩川、十勝川の各水系をとりあげた。 北海道西南部において水神は、神体が女面の像で、神徳が産の神様として祀る信仰形態で伝承されている。一方、近畿・北陸地方の川祭りは、夏越払いの神事を中心に伝承されているのである。このように、近畿・北陸地方から伝播した水神が北海道で伝承する過程において、祓いの神から産の神に変容したことが理解できる。このように伝承地である北海道の変容過程を明らかにするために、水神信仰における和人とアイヌ民族との接触の有無について確認することを本研究の主要な目的としている。 本年の調査は、信仰形態が変容する要因として気候の変化、人口問題、他民族との接触などがあったとの仮定をし調査を実施した。 調査は、先ず幕末から近世初期の文献史料をとりあげて、17世紀以降の松前・蝦夷地の神社および祭神から、水に係わる神について抽出しリスト化した。あわせて、近畿地方の禊ぎ祭礼についての文献史料調査を実施し、特に名越大祓にかかわる祭祀儀礼を示す絵画史料を収集した。 また、北海道の噴火湾沿岸部、石狩川水系、天塩川水系の神社祭祀およびその信仰形態についても調査し、それぞれの水神の信仰形態についてのデータを集積した。 さらに、アイヌ民族の口承文芸にみられる、川の神あるいは水の神としてのペットルン・カムイやワッカ・ウシ・カムイについて、それぞれの神の性格、祭祀者、およびその信仰形態についての抽出を継続して進めた。その結果、ペットルン・カムイやワッカ・ウシ・カムイなどの水の神が、いずれも女性の神として認識されるだけでなく、人を育てるという重要な祭祀神として崇拝されていたことを改めて確認するとともに、アイヌ民族が信仰する両神と松前地・蝦夷地において和人が信仰していた水神の信仰形態との比較検討を試みた。
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