1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610334
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
荻野 富士夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30152408)
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Keywords | 「大東亜治安体制」 / 特高警察 / 思想司法 / 治安維持法 / 外務省警察 / 思想局・教学局 / 教学体制 / 日独伊防共協定 |
Research Abstract |
初年度であるので、史料収集に重点を置くとともに、全体的な構想の具体化を図った。 まず前半では「外務省警察(領事館警察)」関係の史料を、外交史料館・国立公文書館・東京大学東洋文化研究所などで確認し、複写に努めた。すでに手元に集まっている関係史料を読み直しつつ、現在復刻版刊行中の『外務省警察史』の各巻の検討に着手し、その解題執筆のための構想を練りつつある。 後半になって、当初、警察・司法を中心に構想していた「大東亜治安体制」のなかに、教育・思想の統制と動員の視点を付け加えるべきと考えるようになった。朝鮮・台湾などにおける「皇民化」政策としてこれまで研究されてきた諸問題を、アジア太平洋戦争の占領地域における「皇民化」とあわせてとらえ、教育史的な観点とは異なった「治安体制」の角度から、「大東亜教学体制」のありようを検討することが新たな課題として浮上した。現在、これらに関する史料について、国立教育研究所や野間教育研究所などで集めはじめた段階である。 次年度以降、上記の2つの課題に目途をつけることと並行しながら、朝鮮・台湾などの各植民地の治安体制の構造と実相を、1つずつ解明していく作業をおこなう予定である。まだ断片的な把握しかできていない「満州国」の治安体制については、その複雑な警察体制とともに、軍部・憲兵の問題の解明が不可欠である。また、中国占領下の傀儡政権の治安体制にも視野をひろげる必要がある。それらを見る際に、日本の治安官僚の移籍や出向、治安法制全般の貫徹状況などに留意すべきことが、次第に鮮明になってきた。
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