1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610336
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
根本 誠二 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (10250995)
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Keywords | 奈良仏教 / 古代地方寺院 / 古代寺院址 / 古代仏教美術史 / 縁起 / 仏像 / 高僧伝承 / 草創伝承 |
Research Abstract |
奈良仏教の地方的展開に関する研究を進捗させるために、本年度は、研究の柱である古代地方寺院に関わる地域やそれにともなう仏像など仏教美術に関わる史資料の調査を、福島県会津・岩手県北上川流域・滋賀県湖北・佐賀県佐賀市周辺の各地域において実施した。 その結果、これまでの奈良仏教史の研究で等閑視されてきた奈良仏教の地方的な展開について考察を深化させるにあたって、国分寺や古代寺院址に関する考古学的な成果を中心とするだけでなく、当該地域の寺院などに残存する縁起史料といった文献史料のみならず、安置されている仏像等の仏教美術をも史資料として活用すべきであるとの知見を得た。ことに福島県会津地域での調査に際しては、古代仏教美術史の研究者に同行願い、縁起史料など文献史料に基づく調査と仏教美術史の知見を複合させることによって、古代の寺院が、仏像を信仰的な核としてどのように地域に存在していたのかについての復元的な研究の可能性を見出すことができた。一方、古代仏教美術史の研究にとっても仏像の様式を中心としたこれまでの研究動向に対して、文献史学との複合的な研究を進捗させることによって、いわゆる作品分析の一層の深化が期待できるとの指摘をえた。なお、今回の研究調査の進捗によっても、縁起ないしは寺院の草創伝承と同様に仏像などの仏教美術の造形においても、徳一・泰澄さらには行基といったいわゆる高僧伝承との関わりが抽出できた。古代寺院の点在とこうした要素を立体的に構想していくことによって、本研究の目的である奈良仏教がいかにして地方へ展開したのかについての遡及的な考察の可能性を見出しえた。なお、調査の進捗と平行して上記の視点から研究文献の集積も行った。
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Research Products
(1 results)