1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610344
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐竹 昭 広島大学, 総合科学部, 教授 (00127656)
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Keywords | 瀬戸内地域 / 里山 / 林野植生 / 塩田燃料 |
Research Abstract |
近世の瀬戸内地域では,諸産業の発達と激しい人口増加のなかで収奪的な林野利用が展開し,段々畑が開かれるとともに白砂青松と呼ばれる景観がもたらされたといわれている。しかし当時の林野植生の状況が実際どうであったかということになるとほとんど明らかでない。本研究は,広島藩が領内村々に作成させた享保11年(1726)の山帳(御建山御留山野山腰林帳)を分析して当時の林野植生を復元しようとするもので,本年度は安芸郡と賀茂郡40カ村分の山帳をパソコンに入力して分析を行った。 その結果,瀬戸内沿海の両郡ではすでに松中心の植生へおしなべて特化し,その松も小松や樹高の低いものが中心となっていること,なかでも沿岸の村々,特に島嶼部では内陸部に比して小松や樹高の低い松林の比率が高く,盛んに伐採されていたことが明らかになった。これは,城下町・塩田等への燃料供給が,まずは海運利用など輸送の便から沿岸・島嶼部の村々に集中していたことを示しており,それが村々の林野植生の面からも証明されたわけである。島嶼部ではこののち段々畑の開墾が激しく進んで行くが,その前夜の姿をも示している。 上記成果の一部は,賀茂郡の5カ村・安芸郡の2カ村を取り上げてすでに論文として発表しているが,今後とも引き続き入力ずみのデータを検討するとともに豊田郡の事例も分析し,客観的・数量的な資料によってまずは江戸時代中期の姿を復元し,地域の自然的・社会的条件との関連で村々の林野植生のあり方を理解できるよう努める予定である。
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Research Products
(1 results)