2000 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期筑後およびその周辺諸国における地域ネットワークの研究
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11610346
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
宮島 敦子 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (80146109)
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Keywords | 筑後国 / 有明海地域 / 地域ネットワーク |
Research Abstract |
本年度の研究は「福田文書」の整理を中心に進めた。その内容にについては、フロイスの「日本史」の記述内容と照らし合わせて分析した。とくに以下の観点から整理することにつとめた。 (1)肥前国と対外関係。肥前国の西彼杵半島の福田・長崎・横瀬浦には南蛮船が入港しており、それをめぐる平戸松浦氏と大村氏との対立は激化している。これは南蛮船の積み荷である石火矢などの兵器(火器)の確保のためには自領内に南蛮船が入港することが不可欠であったためである。さらにここには宣教師と大村・松浦氏とのキリスト教受容をめぐる問題もある。従来から貿易の利益との関わりからキリスト教を受容したと指摘されているが、そのことは宣教師たちにとっても自明のこととして受け入れられていたことがわかる。 (2)肥前国と地域的ネットワーク。とくにその媒介項となったのが、有明海である。現在のように陸上交通網が整備されておらず、大量に速く輸送する手段として船が活用されていた。今年度は有明海をはさんだ16世紀後半の肥前国と大友領国としての筑後・肥後国さらには豊前国との関係を戦時動員の実態から検討した。 以上の観点から戦国期の有明海を中心とした地域的ネットワークの存在を明らかにするとともに、その広がりが海外貿易へと展開していることが解明できた。これは北部九州が大陸に近いという立地条件による特性であるが、この時代の交通体系において船舶の利用度、活用度の高さに裏付けられたもので、海が陸地を隔てるものとして存在するのではなく、逆に近づけるものであったと言うことができる。
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Research Products
(1 results)