2001 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期筑後及びその周辺諸国における地域ネットワークの研究
Project/Area Number |
11610346
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
宮島 敦子 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (80146109)
|
Keywords | 地域ネットワーク / 国人領主 / 松浦党 / 鶴田氏 / 龍造寺氏 |
Research Abstract |
本年度の研究は肥前国の国人領主である鶴田氏と戦国大名龍造寺氏の関係について、研究を進めた。現在のところ鶴田氏についての独自の研究は、なされていない。そのため今回は、以下の点を明らかにした。 (1)鶴田氏は嫡流家で伊万里市大河野の日在城城主の系統に伝わる「鶴田家文書(嫡)」と庶流家で厳木町岩屋の獅子ヶ城城主の系統に伝わる「鶴田家文書(庶)」の2種類があるが、これらを複合的に読み合わせて、敵流家と庶流家のとった行動の一体性と分離性をみた。その結果、両家の行動は天正1年までは一体化していたが、大友氏傘下から龍造寺氏傘下への肥前国の支配構造が変化するにおよんで一体化が崩れる。このことは戦国期の国人領主の行動が、血縁的連合よりも地縁的連合に傾斜していた事実を示すものであることがわかった。 (2)鶴田氏は松浦党の一員であり、松浦氏との関係が深い。鶴田氏の所領の南側には後藤氏がいるが、両鶴田氏・松浦氏は後藤氏と統一行動をとっており、その傘下に属していた。彼らの行動について関連文書を子細に見ると、後藤氏と松浦氏の連絡にあたっては鶴田氏がなかを取り持っていることがわかる。ここには地域のネットワークの作り方が、血縁関係の古い形態に縛られながらも、地縁の論理でのネットワークを構築しようとする変化を読みとれる。 (3)龍造寺氏の領国体制のなかで鶴田氏がどのような位置にあったのか。この点について龍造寺氏の物資調達のありかたを通じて、検討した。龍造寺氏は物資調達を多久長信に命じており、彼が調達の指揮をとっていた。そのなかで、鶴田氏は材木の調達を命じられていた。これは大川野や岩屋が山間部に位置していることによるが、さらには河川利用による材木の積み出しに容易であることも関係していたと考えられる。このように領国内の国人領主の統合は、物資調達のうえから(地域の特産物を積極的に活用ために)も重要なことであった。
|
Research Products
(1 results)