2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610347
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 教授 (90182823)
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Keywords | 地方知行制 / 主従制 / 大名家 / 給人 / 給人財政 / 藩財政 / 借銀 / 自己破産 |
Research Abstract |
私の本研究の目的は、簡単にいえば、近世幕藩制下の武家が「自己破産」しないのはなぜか、江戸版「会社更生法」とでもいうべき近世武家の更生・財政保障システムの実態について研究することにある。私は、平成11年度の史料調査とその検討をふまえて、平成12年10月に「幕藩制初期の給人財政と財政管理体制」(『歴史学研究』741号)を発表した。そして同論文もふくめた、当研究費補助金の研究テーマを主要な課題とした著書『近世大名家の政治経済構造』(仮称)を平成13年3月に刊行予定である。そこで課題としたのは、大名家臣の身分安定という問題である。無論、大名家臣は、主君の怒りにふれて改易・追放になったり、後嗣が無く断絶することは珍しくない。しかし、すくなくとも大名家臣は経済的理由によって武士身分を失うことはない。すなわち、大名家臣(給人)は近世を通じて窮乏・破綻化を繰り返すが、債務を抱えて知行を質入・売買したり、武士身分そのものを喪失するような「自己破産」の例はない。いずれは救済され、更生している。そこには、近世大名家(藩)の再生産過程において家臣の個別破綻を防ぎ、その領主的再生産を保障している手立てが構造化されているものと想定される。 私が注目し、本研究を通して明らかにしたいと考えているのは、家臣知行の担保物権としての性格・機能である。つまり、知行=知行物成徴収権を主君に一時返却し、知行物成をもって債務を返却して家臣に復帰する方式である。目下、九州・中国諸藩を中心に事例を集積しつつあるので、13年度は今少し補充調査を行い、然るべき成果報告書を提出するつもりである。
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