2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610347
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 教授 (90182823)
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Keywords | 給人 / 知行制 / 地方知行制 / 物成詰知行 / 軍役 / 自己破産 / 債務 / 給人財政 |
Research Abstract |
平成11年度から同13年度までの3年間、科学研究費補助金の交付をうけた。私の研究課題は、九州諸藩を中心に、近世大名家という主君(大名・藩主)と個々の家臣から武家領主集団の再生産維持・保障システムの実態を究明しようとしたものである。平成11・12年度は九州・中国諸藩の財政・金融・知行制関係史料を収集し、併せて上方の金融関係史料を収集し、ある程度私の考えを一般化しうる史料的見とおしをもった。そして平成13年度は史料収集と併行して進めていた研究成果の取りまとめに専念し、同年8月、『近世大名家の権力と領主経済』(単著、489頁、清文堂)を刊行した。中心テーマのひとつが本研究であり、大名家という武家領主の社会集団を貫く組織原理として、成員(家臣)の生活と身分が保障されているいることを重視し、その実態を詳細に描き出し、近世知行制について独自の評価を試みた。近世知行の基本特質として重視したのは給人(家臣)知行の担保物権としての機能・役割である。大名家臣(給人)にとって債務を可能にし、貸手側の債権を保証しているのは、基本的に唯一の生活手段たる知行以外にありえない。ここに初期大名家において、個々の家臣の領主的再生産と財政保障を目的とした、知行を担保物権とする「財政管理」が体制化され、また家臣(給人)の収入(物成)を重視した知行制が志向される。以上は小倉・熊本細川藩を素材にしたものである。本研究では、諸藩の比較研究を進め、理論化を深化させるつもりであったが、この点については継続して検討を進めるつもりである。
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