2000 Fiscal Year Annual Research Report
「女子職業技術教育におけるジェンダーバイアスの近現代史的展開に関する基礎的研究」
Project/Area Number |
11610352
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大澤 秀男 日本大学, 理工学部, 教授 (00090986)
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Keywords | ジェンダー / ジェンダー・バイアス / 女子職業技術教育 / 職業技術教育 / 職業教育 / 職業資格 |
Research Abstract |
平成11年度および12年度の調査研究によって次のことが抽出され確認できた。第一に、近代化期における女性の就労・職業への参入の状況を各種関連著書、雑誌・新聞記事、書簡、統計資料の発掘収集、整理、分析した結果、新たに登場した職業への参入においても男女によって異なり、女性の参入は従来からの女性の特性とされる範疇に限定されていた。第二は、女性の就業構造の変遷と現状を各種統計資料から抽出した結果、就学・就職、就労において明確なジェンダー格差が存在し、旧来から男性が独占してきた職種への女性の参入は近・現代を通して極めて少ない。とりわけ理工系技術職の分野はこの傾向が顕著である。第三は、職業技術教育とジェンダーとの関係について工業・技術教育を中心にその史的展開を追い検証した結果、女性に対する職業技術教育はきわめて限定的なものであったことが判明した。また、初等・中等教育における体系的な普通教育としての職業技術教育がこれも近・現代を通して欠落ないし極めて不充分であった。第四には、高等教育機関の女性の職業教育に対する影響を資格取得との関係から検証した結果、特に女子高等教育機関は資格授与においても旧来からの性役割にもとづくジェンダー構造を再生産する機能を果たしてきたといえる。第五として、以上の調査、分析と考察の結果、女性の職業、なかでも技術職への参入に対する阻害の根本的要因が伝統的な日本のジェンダー構造にあることが確認された。ジェンダーに拘束されない職業への参入、特に女性の活用と職業能力の向上を推進していくためには、日本のジェンダー構造の解消に向けた国家的取り組みが不可欠であり、その中でも特に学校教育が果たすべき役割が最も大きいといえる。
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