1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610353
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 満 明治大学, 文学部, 教授 (10189855)
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Keywords | 赭鞭会 / 前田利保 / 『袖珍鑑』 / 独度涅烏私 / 大坂屋四郎兵衛 / ウェインマン / 日新会 |
Research Abstract |
今年度の研究は、拙稿「天保期の本草研究会『赭鞭会』-前史と成立事情および活動の実態ー」(『駿台史学』第98号,1996年)をベースにして、閲覧し残した史料や未調査に終わった部分を埋める作業に当たった。 (1)赭鞭会の有力メンバーであった富士藩主前田利保が富山に隠居後、富士で催した「日新会」なる珍草異草の月次品評会の史料を発掘した。「日新会」については、『贈従三位 前田利保』(富山県立図書館蔵)にその名が知られるだけで、これまでほとんど言及されることがなかった。今後は、この史料の分析から日新会の実態を明らかにし、できれば富山藩政とこうした薬品会や前田利保の本草学の役割を考察したいと考えている。 (2)前田利保の著書『袖珍鑑』は2冊本であること、第2冊には初版と改訂版があることを確認した。なお、東京古典会(1995年11月10・11日)に家臣であった貴邑(木村)意斎が藩主利保から賜ったと記す刊本が出品されたことがある。本書の所在は判明しているので、いずれ比較したいと考えている。 (3)著者未詳とされる『独度涅烏私』写本1冊(杏雨[杏雨ー5901])が赭鞭会のメンバーである大坂屋四郎兵衛(藤井咸斎)の自筆写本であること、書名の「独度涅烏私」は誤りで、ウェインマン『薬用植物図譜』によるものであることを確認した。本写本を赭鞭会メンバーたちの西洋博物学受容という問題意識から考察するための資料の一つとしたい。 (4)このほか、前田利保の本草研究におけるフィールドワークを検討するため、関連資料の幾つかを調査中である。もちろん、折に触れて赭鞭会メンバーの著書を閲覧し、赭鞭会の実態と各メンバーの業績を検討するため鋭意努力している。
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