2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610353
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 満 明治大学, 文学部, 教授 (10189855)
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Keywords | 赭鞭会 / 前田利保 / 黒田斉清 / ハウトイン / 江馬活堂 / リンネ |
Research Abstract |
近世後期の日本に齎されたハウトイン(M.Houttuyn)『自然誌』全37巻37冊(1761〜1785年、アムステルダム刊)が、日本の本草学者や蘭学者たちによって訳出・利用された12例を明らかにした。天保年間に前田利保と黒田斉清が本書のオランダ語原本を共同で購入したことが知られている。『砂妥子・〓蛸図説』、中得一訳『林娜氏訳附考』がハウトインの図の転載・訳出であることは以前に指摘した。利保に関するものとして、『林娜斯十一篇・林娜斯十二篇・林娜斯第十七章』(内閣文庫蔵、『文鳳堂雑纂』巻六十九所収)がハウトインから犬類・猫類・熊類の部分を訳したものであることを指摘し、この訳文が『林梛氏訳附考』ときわめて類似していることから、本書の訳出が『林娜氏訳附考』と同様、利保の命による中得一の訳ではないかと推定した。頭註に楽善堂(黒田斉清)の説が付されることから、本書の訳出に黒田斉清がかかわっていることも傍証となる。 黒田斉清が文政11年、長崎警護の際シーボルトに質問した記録『下問雑載』にオランウータンついての問答があり、これは赭鞭会での課題とされた「人類」研究とかかわるのではないかと考えた。斉清はかつて長崎に齎されたオランウータンに大きな興味を示し、その死後オランウータンの全身の皮を入手してもいる。 上記のほか、馬場大助著『舶上画譜(遠西舶上画譜)』10冊(安政2年序、東博蔵)および『群英類聚図譜』78巻78冊(杏雨書屋蔵)の検討に入った。いずれも大部なため、詳細な検討は今後の課題である。 美濃大垣の藩医江馬活堂の江戸勤務中の日記『東海紀行』(『藤渠漫筆』九編巻三)を翻刻紹介した(『洋学』第10号、2002年3月)。本史料には赭鞭会に関わる記事をはじめ、当時の江戸の本草学や医学・蘭学界の様子が書き留められている。
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