1999 Fiscal Year Annual Research Report
墨書土器からみた古代-中世における文化伝播と地域的変容に関する研究
Project/Area Number |
11610361
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keiei University |
Principal Investigator |
柴田 博子 宮崎産業経営大学, 法学部, 講師 (20216013)
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Keywords | 墨書土器 |
Research Abstract |
本年度は、九州を中心に国内の墨書土器関係の資料収集をおこなうとともに、古代の日本へ多大の文化的影響をあたえた百済・新羅での墨書土器について、研究調査の準備をおこなった。 まず、朝鮮半島における古代の墨書土器の出土とその研究状況を調査したところ、韓国では木簡とともに本格的な研究が始められつつある状況であった。新羅の首都であった慶州では、雁鴨池遺跡から墨書土器・刻書土器・ヘラ書土器が出土している。官衙名やあきらかに祈祷にかかわると考えられる文言のほか、「×」印なども多くみられるとのことである。ここには日本との共通点がうかがえ、墨書という営みのルーツを考える上で重要である。 地域間の比較研究としては、日向国と隣国の豊後国とを比べると、両地域とも出現時期は8世紀前半であるが、盛行する時期が豊後国では8世紀末から9世紀初頭、日向国では9世紀から10世紀であり、ほぼ消滅する時期は豊後国では10世紀、日向国では11世紀と、日向国のほうが遅い。また土器の種類は両地域とも土師器が多数をしめ、それは出土する土器のなかで土師器の占める比率と相関していると思われる。ただしこの傾向は全国どこでも見られるものではないらしく、たとえば山形県では墨書土器はほとんど須恵器であるが、出土する土器全体には土師器や赤焼土器も少なくない。このような相違点に一層の精査が必要であると考えている。
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