2000 Fiscal Year Annual Research Report
墨書土器からみた古代・中世における文化伝播と地域的変容に関する研究
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11610361
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keiei University |
Principal Investigator |
柴田 博子 宮崎産業経営大学, 法学部, 講師 (20216013)
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Keywords | 墨書土器 / 出土文字資料 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に続き全国で集成されている墨書土器関係資料の収集と、朝鮮半島での古代の文字資料についての研究状況の調査を行った。 韓国では2000年9月に国立清州博物館にて「韓国古代の文字と記号遺物」展が開催され、古代のおもな文字資料が集められた。その成果によると、韓国への文字すなわち漢字の本格的な流入は紀元前3世紀ころからで、特に前漢の楽浪との接触によって漢字を使用する世界に入ったようである。楽浪時代の古墳や土坑墓等から、文字を土器に漆で書いたもの、土器・瓦・磚などに彫ったもの、印章に彫ったもの、鏡・銭に鋳されたものなどが出土している。また紀元前1世紀の墓から筆と削刀が出土しており、上層階級を中心に筆記具の使用が確認できる。倭国と交流の深かった百済では、新羅にくらべて碑文の比重が低く、瓦や土器、磚などの土製品に文字が彫られた例が多い。今後は、戦前に出土した墨書遺物についても最新の科学的分析をあらためて行う必要性が提唱されている。 日本国内の墨書土器の地域性については、現在最多の墨書土器を集成している千葉県を資料として下総国と上総国を比べてみた。両地域とも墨書が出現するのは8世紀前期から、消滅するのはほぼ10世紀末、ピークは9世紀前期で、土師器が最多である。記入方法は墨書が最も多いが、8世紀代の線刻の比率が下総ではやや高い。また記載部位の主流が底部外面から9世紀に体部外面へと変化する地域とそうでない地域とがあり、今後の検討課題である。
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