2001 Fiscal Year Annual Research Report
墨書土器からみた古代-中世における文化伝播と地域的変容に関する研究
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11610361
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keikei University |
Principal Investigator |
柴田 博子 宮崎産業経営大学, 法学部, 講師 (20216013)
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Keywords | 墨書土器 / 出土文字資料 |
Research Abstract |
本年度は、これまでに続いて各地で集成されている墨書土器関係の資料の収集とともに、地域間の相違について検討を行なった。 まず九州の墨書土器は、地域別に北部・中部・南部に分類できる。具体的には、北へ向かうほど須恵器の比率が高くなり、ヘラ書・刻書土器で7世紀以前に遡るものが少なからずあって朝鮮半島との文化的交流が想定され、体部外面への書記率が低下し底部外面が高くなる、という南北の地域差が指摘できる。 次に四国の4県では、各々まだ20〜60個体程度しか報告されておらず、巨視的な検討は困難である。これまでの出土の限りでは、香川県・愛媛県では須恵器が多いこと、愛媛県には7世紀のヘラ書・刻書があること、いずれの県でも書記部位は底部外面が最多であること、などの様相がみられる。 また東北地方に目をむけると、山形県・秋田県ではすでに2000点を越える墨書土器が出土しており、岩手県でも1000点を越えている。この出土量は、古代には同じく律令国家の辺境地域であった南九州よりも多い。その背景には、1万点を越える出土が知られている千葉県をはじめとする、関東地方との文化的関係を考える必要があろう。この東北地方では、秋田県・岩手県の北部にいたると土師器の比率が高くなること、ヘラ書・刻書が墨書に先行する様相はどこにもみられないこと、岩手県の変遷の様相が宮崎県のそれと類似していること、平泉では12世紀後期の墨書土器に、早くも中世的な様相がみられることなどの特色がある。 今後は、出土量の多い中部・関東地方や畿内の墨書土器をもとりあげ、墨書土器文化の伝播とその地域的差異が宮都・畿内を中心におおよそ同心円状に広がっているかどうかを検証したいと考えている。
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