2000 Fiscal Year Annual Research Report
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11610364
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Research Institution | Paleological Association of Japan, Inc. |
Principal Investigator |
古藤 真平 財団法人古代学協会, 古代学研究所, 講師 (70250058)
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Keywords | 仁和寺 / 院家 / 仁和寺諸院家記 / 真光院 / 般若寺 / 宝持院 / 顕證 / 心蓮院 |
Research Abstract |
仁和寺の研究において院家群の研究は必要不可欠である。本研究は、その基礎作業として、院家について記した院家記類を書誌学的に調査することを目的としている。平成12年度においては、11年度に引き続き、仁和寺以外で所蔵されている『仁和寺諸院家記』の採訪調査を行った(採訪先は国立国会図書館・神宮文庫・東京大学史料編纂所)。その成果として、百花庵宗固手沢校本(文化7年〈1810〉に『群書類従』が翻刻した写本)と恵山書写本(史料編纂所所蔵。江戸中期。奈良国立文化財研究所編『仁和寺史料』寺誌編-で翻刻された写本。11・12両年度に調査)によって広く知られている、院家ごとに歴代院主の経歴を詳細に記すスタイルの『仁和寺諸院家記』についての認識を深めることができた。すなわちこの2本のテキスト(所収院家は真光院から般若寺までの78院家。配列に錯簡あり)は、『仁和寺史料』解題が指摘したように、恵山書写本またはその祖本において成立したと考えられるが、神宮文庫所蔵本(書名は『御室院家記』。天明4年〈1784〉に村井敬義が皇太神宮林崎文庫に奉納した写本)・和学講談所本(国立公文書館所蔵。江戸後期。11年度に調査)・温故堂文庫本(国立国会図書館所蔵。江戸後期。真光院から宝持院までの18院家について記すのみ)の3本がその系統の写本として位置付けられる。壬生家本(国立歴史民俗博物館所蔵〈田中穣氏旧蔵〉。江戸前期。11年度に調査)は、上記の5本に先行するだけでなく、その原型本と位置付けられる写本であり、顕證(1597〜1678)が心蓮院本『仁和寺諸院家記』(仁和寺所蔵。室町末期)を基に諸書を参照して編集した可能性が浮かび上がってきた。院家記類を書誌学的に研究することにより、各院家の沿革や院主の次第についての知見が深まったので、平成13年中に刊行される『仁和寺研究』第3輯で発表する予定の「仁和寺の伽藍と諸院家(下)」にその成果を盛り込んだ。
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Research Products
(1 results)