1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610391
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
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Keywords | 属州 / ブリタンニア / ゲルマニア / ローマ帝国 / ローマ化 / 都市化 / ラテン語 / 碑文史料 |
Research Abstract |
本年度はこの研究の最初の年であるため、まず属州ブリタンニアと属州ゲルマニアに関する基本的な史料・研究文献の収集と読破に努めた。また、属州史研究を本格的におこなうために必要な考古学的調査を主目的として渡欧し、イギリス、ドイツ、オーストリアのローマ帝国都市遺跡や陣営跡、そして博物館の所蔵品を調査した。さらに、ロンドン大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ハイデルベルク大学、ウィーン大学などの研究機関を訪れ、所蔵の史料や研究文献を閲覧するとともに、所属のローマ帝国史研究者と意見交換をおこなった。とくに、オックスフォード大学教授Fergus Millar博士とハイデルベルク大学教授Geza Alfoldy博士から、本研究に関する多くの助言をいただいた。 研究の現段階における知見に拠れば、属州ブリタンニアに関しては都市化を軸とするローマ化の進展は従来の諸研究の想定していた程度より遅れており、属州全体にわたってきわめて軍事色が濃厚であったと思われる。ラテン語使用の重要な証拠たるVindolanda Writing Tabletsにしても、軍政的性格が強く、文化的側面を示す要素の割合は少ない。属州ゲルマニアについては、一層の立ち入った調査が必要であるが、地方によっては都市化の進展が属州ブリタンニアより進んでおり、墓地などイタリアに近い性格をよく示していることが両属州の比較調査で判明した。本研究に関する史料としては文学作品の量が限られているため、碑文史料や貨幣、考古学的証拠の精査が次年度にさらに進められるべきと考えている。また、従来の諸研究で自明のごとく使用されてきた「ローマ化」という概念、用語についても、考古学的な観点から再考する研究動向があることを知りえたので、そうした問題点についても、さらに考察を深めてゆきたい。
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