2000 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリアにおけるイングリッシュ・アイデンティティ
Project/Area Number |
11610393
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤川 隆男 大阪大学, 文学研究科, 助教授 (70199305)
|
Keywords | オーストラリア / イングリッシュ / アイデンティティ / 中国人移民 / ゴールドラッシュ / ヴィクトリア植民地 |
Research Abstract |
本年度は、7月から8月にかけてのオーストラリアでの史料の調査と、その史料の整理及び分析を行った。 オーストラリアでの史料調査は、主にキャンベラのオーストラリア国立図書館で行い、ゴールドラッシュの時代の新聞から関連の記事を収集した。オーストラリアのイングランド系住民のアイデンティティは、一つには先住民アボリジナルとの関係、一つにはカトリック系アイルランド人、さらに流入してきた中国人との関係を通して、複合的・立体的に把握することができる。今回の史料調査の目的は、第3の関係におけるイングランド系のアイデンティティを明らかにすることにあった。収集した記事はヴィクトリア植民地の地方都市、ビーチワース、ベンディゴ、バララットなどの地方新聞のものである。これらの新聞によって、当時の人々が抱いていた中国人に対するイメージと、日常生活における具体的な人種関係の在り方を理解することを通して、イングランド人の白人としての意識を分析しようとした。これらの分析によって、現在のところ、従来言われていたほど中国人に対する人種偏見が強くなかったことが明らかになった。中国人を同じ社会生活を共有する平等な成員として受け入れようとする流れが、オーストラリアには存在したのである。中国人を必ずしも最初から排除しようとしない態度や制度は、イングランド的なアイデンティティの一つの重要な特徴であると言えるように思われる。 今後は、この点を中心にオーストラリアのイングランド系の人々の重層的アイデンティティを『アーガス』などの利用を進め、さらに分析する予定である。
|