1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610397
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安野 正明 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80202365)
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Keywords | ドイツ社会民主党 / 戦後ドイツ政治史 |
Research Abstract |
一年目の本年度は、戦後社会民主党史、戦後ドイツ政治史に関する諸文献を購入し、平成11年8月にはボンの社会民主党文書館で未刊行史閲覧の機会を得て、基本的な史料収集を終え、分析を進めている。 現在、戦後社会民主党の変化を、1950年代後半の基本綱領(ゴーデスベルク綱領)制定過程を中心に分析を進めている。今年度の研究を通じて、以下の論点が浮かび上がってきた。 1 1959年11月に基本綱領が制定されるまでに、1958年5月および1959年11月と、基本綱領草案が二回作成されており、その草案の内容がはなはだしく異なっている。このこと自体の指摘は新しいものではないが、本研究ではボンの文書館で収集した史料によって、なぜ、いかなる経緯で「最初の草案の短縮」という建前の下で、全く別物の基本綱領草案が形成されたかの党内政治過程を克明に追うことが出来るようになった。この分析を通じて、1959年のゴーデスベルク綱領制定が「民主的手続きを経ての合意形成の帰結」と評価することが適切か、吟味をしている。 2 従来ゴーデスベルク綱領は、党組織改革、党指導部の人事刷新とワンセットの党改革の一環と捉えられてきたが、基本綱領制定を主導した勢力は組織改革に消極的な党指導部であり、組織改革に熱心だった「改革派」は基本綱領制定を当初は妨害していた。このような複雑な党内関係を押さえつつ、ゴーデスベルク綱領制定と社会民主党内の対立する諸潮流との関連、この綱領制定を党改革全体の中にどう位置付けるかについて分析を深めている。 来年度には、以上の論点を解明した論文を完成できる見込みである。
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