アメリカ合衆国における家族・教育・労働―人種・階級・ジェンダー視角による史的研究

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 11610405
• Research Institution: Tsuda College
• Principal Investigator: 高橋 裕子 津田塾大学, 学芸学部・英文学科, 助教授 (70226900)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 宮井 勢都子 東洋学園大学, 人文学部・英米地域研究学科, 教授 (10200114) ; 大辻 千恵子 都留文科大学, 文学部・比較文化学科, 教授 (90176941)
• Keywords: ジェンダー / 人種 / 福祉国家 / 奴隷制 / 男性性 / アイデンティティ / 奴隷制廃止論 / 教育

Research Abstract

本年度も、基本的には三者の個別研究を各自出進めた。以下で各自の進行状況の概要を述べる。高橋(研究代表者)は、日米の教育における接点をジェンダー・人種の視点から考察したこれまでの研究を纏めた『津田梅子の社会史(仮題)』の校正の作業を進めた。また、男性学/男性史の中での「男性性」の研究動向をリサーチすると同時にジェンダー史と呼ばれる分野を通史的にとらえるよう試みた。大辻(研究分担者)は、2001年7月に開かれた京都セミナーで、ナンシー・コットの近著Public Vows(2001)に基づく"Grooming Citizens : Marriage and the Civic Order in U.S. History"の基調報告に対するセッションで報告する機会を得た。特に1980年代以降加速したジェンダー視角による西欧福祉国家の国際比較研究の成果を取り入れながら、アメリカ合衆国がいかに税制や家族制度において他のどの西欧福祉国家よりも極めて家父長的であるのかを明らかにした。本セミナーでは、高橋が大辻報告のコメンテーターをつとめ、宮井もまた参加した。セミナーの前後に研究会を集中的に開き、研究課題の討議を重ねた。宮井(研究分担者)は、本年度もアメリカ奴隷制反対協会が子ども向けに発行した反奴隷制冊子『奴隷の友だちThe Slave's Friend』の分析を通し、奴隷制廃止論に見られる黒人の表象のあり方を考察した。なかでも奴隷制廃止論者によって語られる「黒人」イメージに対比させて「白人」アイデンティティが形成される過程や、廃止論者が強調した身体的境界線を越えた共感(異人種の内面に対する共感)、自由の前提としての身体管理の議論を整理した。(「子どもたちと奴隷制廃止運動『奴隷の友だち』の分析を中心に」『アメリカ文化の旋律を奏でる(仮題)』(平成14年度出版予定))

Research Products

• [Publications] Chieko Otsuji: "Gender and the American Welfare State Toward A Citizen-Worker-Carer Society"Proceedings of the Kyoto American Studies Summer Seminar. 139-169 (2001)
• [Publications] 宮井 勢都子: "回顧と展望:北アメリカ"史学雑誌. 第110編第5号. 411-415 (2001)
• [Publications] 宮井 勢都子: "人種奴隷制とアメリカ(書評論文;清水忠重『アメリカの黒人 奴隷制論-その思想史的展開"アメリカス研究. 第6号. 165-171 (2001)
• [Publications] 高橋裕子: "津田梅子の社会史(仮題)"玉川大学出版部. 234 (2002)