1999 Fiscal Year Annual Research Report
大革命・ナポレオン期フランスにおける「工業化モデル」の転換
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11610408
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
服部 春彦 京都橘女子大学, 文学部, 教授 (20022345)
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Keywords | フランス革命 / 総裁政府 / 工業化 / 貿易 |
Research Abstract |
研究課題の遂行に必要な研究文献と史料の収集をほぼ当初の予定通りに行うとともに、それらを用いて、主に次の2点の分析と解明を進めることができた。 1.フランス革命後半期の総裁政府の経済膨張政策について外相ドラクロワとその後任者タレーランとの政策構想を中心に検討を加えた。まずドラクロワが作成したスペインとの通商条約草案及び報告、また彼が実施した全国主要都市の商工業者に対するアンケート調査の記録をマイクロ・フィルム等で入手して分析し、この時期にフランスの政府と実業界がともにスペインとそのアメリカ植民地への商業進出の強化を望んでいたこと、その企図がスペインの抵抗により挫折した後に初めて、総裁政府の経済膨張政策はヨーロッパ大陸内部へと集中され、チザルピーナ共和国との同盟条約及び通商条約が示すようにフランスによる北イタリアの経済的植民地化が目指されたことを、明確にすることができた。この分析結果については、平成11年11月2日に史学研究会大会で行った講演「フランス革命、戦争、貿易」において発表し、その要旨を学会誌『史林』本年1月号に掲載した。 2.19世紀初頭においてなお影響力を保持していた「ネオ重農主義者」のフランス経済再建=再編構想を具体的に捉えるために、その代表者の一人ボワランドリの主著『フランスの農業・製造業・商業の進歩に最も好都合な諸原理の吟味』(1815年刊)を詳しく分析し、その主張の特色が、農民的小土地所有の確立に伴う農業生産性の増大、対外貿易の全面的自由化と植民地における禁止制度の廃止、絹製品・レース等の奢侈品工業におけるフランスの対外優位といった点の強調にあることを確認した。
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