2000 Fiscal Year Annual Research Report
大革命・ナポレオン期フランスにおける「工業化モデル」の転換
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11610408
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Research Institution | Kyoto Tachibana Women's University |
Principal Investigator |
服部 春彦 京都橘女子大学, 文学部, 教授 (20022345)
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Keywords | 工業化 / フランス革命 / ナポレオン / 資本主義 / イギリス / スペイン / イタリア / 総裁政府 |
Research Abstract |
本研究では、フランス革命・ナポレオン期を画期としてフランス経済の発展モデルに著しい変化が生じたとの見通しに立って、同時代の政治家や経済学者らがフランス経済の再建と新たな発展のためにどのような方策を提起したかを考察した。まず第1に、昨年度に引続き、革命後半期の対英戦争の中でなお海外市場依存型の工業化路線を追求した総裁政府の対外経済政策、とりわけ外務大臣ドラクロワによるスペイン帝国市場への進出プランの内容について解明を深めた。その際、パリ国立古文書館などでの資料調査によって入手した彼の対スペイン通商条約草案、全国主要都市の商工業者に対するアンケート調査の記録、国民公会末期に作成された公安委員会商務局の意見書などの一次資料を活用して、ドラクロワの構想の特色とその背後にあった実業界の要求を明確にすることができた。そして彼の企図が挫折した後に初めて、総裁政府の経済膨張政策はヨーロッパ大陸内部へと集中され、フランスによるイタリア諸国の経済的植民地化が目指されたことを確認した。次に第2には、当該期にフランス経済の再編と発展に関して提起された3つの路線を代表する人物として大陸封鎖実施前夜になお海外貿易の再建による工業発展の道を希求したフェリエ、農業生産と伝統的・奢侈品的工業生産に依拠しつつ国民経済の自立的発展を図る「新・重農主義者」ボワランドリ、王政復古後に「新・重農主義」への一定度の歩み寄りによってイギリスとは明確に異なるフランス独自の工業化の道を提起したシャプタルの3名を取り上げ、それぞれの所説の特色と歴史的意義について、主要著作を渉猟して再考を加えた。その結果、シャプタルの経済政策論がナポレオン戦争後のフランス経済の国内的、対外的現実に即応するものであったが、その成立にはボワランドリの「新・重農主義」理論が重要な影響を与えていることを、明らかにすることができた。
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