1999 Fiscal Year Annual Research Report
製塩土器の型式学的検討に基づく古墳時代中後期中部瀬戸内産塩流通システムの復元
Project/Area Number |
11610420
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
大久保 徹也 徳島文理大学, 文学部, 講師 (30309695)
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Keywords | 土器製塩 / 古墳時代の手工業生産 / 分業生産 / 流通システム |
Research Abstract |
上記課題の研究は(1)中部瀬戸内地域における古墳時代製塩土土器の厳密な検討に基づく型式設定、(2)内陸消費遺跡出土製塩土器の詳細観察に基づく産地同定、の二つの作業が中心的作業となる。研究初年度の本年度は主に(1)部門を中心に研究を進めた。(2)部門については、内陸消費遺跡資料を特に留意しつつ既報告資料を中心に近畿〜中国四国地方全体の製塩土器出土遺跡データベースの作成を進め、次年度作業の準備をおこなった。 (1)部門作業の詳細は次のとおりである。第一に中部瀬戸内地域産製塩土器の型式的特徴を抽出することを目的として、古墳時代を通じて類同的な製塩土器型式変遷が指摘されている、周防灘沿岸地域を除く瀬戸内海沿岸諸地域および若狭湾岸地域生産地資料の全般的な比較検討を行い、基本形状・成形・調整・焼成技法の各面から中部瀬戸内産製塩土器の特質を整理した。その結果、ほぼ古墳時代の全過程を通じて少なくとも成形・調整技法レベルにおいて他地域産製塩土器との差異を確認することが出来た。特に従来、同一型式として一括されることの多かった古墳時代前期・中期段階資料の識別指標を確認し得た点は重要な成果であった。第二には、古墳時代後期段階資料を中心に更に中部瀬戸内地域内部における地域的な型式差を追求した。この点については、以前におこなった作業で一定の見通しを得ていたが、今回更に器面調整手法と基本形状の点で新たな識別指標を確認することが出来た。この結果、中部瀬戸内地域産製塩土器を古墳時代後期に限れば5つの小地域類型に区分することが可能となった。 以上の成果は次年度に予定している内陸消費遺跡資料検討の基礎を提供し、様々なレベルの塩流通を具体的に追求する重要な手かがりとなるものである。
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