1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610436
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
沼本 克明 広島大学, 教育学部, 教授 (40033500)
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Keywords | 声明 / 譜本 / 日本語史 |
Research Abstract |
本研究は、表題の研究課題の下に、平成11〜13年度の三年計画として申請し採択されたものであり、本年度は主として声明資料の調査発掘を目的として掲げた。従って現時点では調査資料の詳細な分析には至って居らず、特にここで報告すべき新たなる知見は得られていない。但し、本年一年間の主として近畿地方の諸寺の調査によって、従来指摘されていなかった声明資料が多数残存していることが順次明らかになって来たことを報告しておきたい。 本年度は、申請時に計画した調査地のうち、仁和寺、随心院、石山寺、東寺、叡山文庫の近畿各寺と東京上野学園音楽資料室の声明資料の調査を行うことが出来た。このうち、特に注目すべきは、仁和寺御経蔵の第82箱声明、第83箱法則の二箱である。これは全て仁和寺で鎌倉時代から室町時代に行われた声明資料が一括所蔵されているもので、これらの資料によって、従来必ずしも明確でなかった仁和寺相応院流の源流とその実態が究明されるべき貴重なものである事が判明しつつある。亦、上野学園音楽資料室所蔵の声明資料の中、天台宗派の「法華懺法」「慈覚大師作法」等はこれ亦鎌倉時代の大原流天台声明の初期の実態を伺い得る貴重な資料群である事が判明している。 これらの資料につき概観した所、例えば、従来早くにその特徴が消失してしまったと説かれている喉内入声「-K」が開音節化しないまま鎌倉時代まで保たれていたという事実等が指摘でき、日本語音韻史の実態がより詳細に記述出来る可能性が見出される。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 沼本克明: "漢音の声母識別声点資料について"鎌倉時代語研究. 23輯. (2000)
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[Publications] 沼本克明: "蘓悉地羯羅経略疏巻四釈文"石山寺資料叢書 聖教篇第二. (2000)
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[Publications] 沼本克明他: "高野山真言宗別格本山本覚院聖教目録"私家版. 556 (1999)