2001 Fiscal Year Annual Research Report
国語資料としての中世仮名文書の研究―形容動詞を中心とする形容表現から―
Project/Area Number |
11610441
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Research Institution | KYUSHU SANGYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
辛島 美絵 九州産業大学, 国際文化学部, 助教授 (60233996)
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Keywords | 仮名文書 / 古文書 / 形容動詞 / 形容詞 / 明白 / 語史 / 法制用語 / 鎌倉時代 |
Research Abstract |
交付申請書には13年度の研究実施計画として、(1)仮名文書に独特な形容動詞について語誌的な考察を行い、論文として発表する。(2)三年間にわたる仮名文書の形容動詞研究をとおして得られた結論を、報告書としてまとめる。という2点を掲げたが、本年度は、先年度に<仮名文書の文体や語彙の特色をさぐる鍵となる形容動詞>として選別した「じち(実)なり」「そうそう(忽忽・早早)なり」「いさい(委細)なり」「めいはく (明白)なり」「ぶんみょう(分明)なり」「じっしょう(実正)なり」、「けんぜん(顕然)なり」「むきょく(無極)なり」のうちの、特に「めいはく(明白)なり」をとりあげて、(1)の語誌的な考察を行った。 具体的には、(1)鎌倉時代の仮名文書中に用いられる「めいはく(明白)」の用例を調査し、その用法を整理して、論文「仮名文書の形容動詞(三)-「明白なり」-」を発表した。 (2)しかるのちに、鎌倉時代以前の仮名文書以外の文献における「めいはく(明白)」の用例を広く調査し、中国の文献における用法とも比べつつ、その特色について論文「鎌倉時代以前における『明白なり』の特色--古文書他の用例から--」に発表し、平安・鎌倉時代の「明白なり」は<古文書用語><証言・証明用語>とでもいうべき特殊な性格の語であることを指摘した。さらに、「明白」がそのような特色を持った漢語として定着するに当たっては、国家体制を構築し、法制の整備を行ってゆく上での中国語との接触が深く関与していることも、中国の法律書や古文書の用例から推測した。 (2)の<三年間にわたる仮名文書の形容動詞研究をとおして得られた結論>については、研究成果報告書において詳述するが、仮名文書の口語を反映しやすい性格、文書の様式と用語との関わり中国の律令や古文書との用語の関わりなど国語資料としての仮名文書の性格をあらわす重要な発見が多々あった。
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