2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610443
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
木村 東吉 島根大学, 教育学部, 教授 (90031814)
|
Keywords | 宮沢賢治 / ≪春と修羅 第二集≫ |
Research Abstract |
宮澤賢治記念館が所蔵する宮沢賢治の自筆原稿を調査して、『新・校本宮澤賢治全集』における翻刻ミスを確認するとともに、作者の書体の変化と筆記具の色を確認し、これと類似した色鉛筆を使用した手帳を確認することによって、原稿への手入れ時期推定の資料を得た。今年度は『詩稿補遺』および『春と修羅 第三集』を重点的に調査したが、『春と修羅 第二集』についても補充調査を行った。 次ぎには、宮沢賢治の友人であった藤原嘉藤治の遺族の了解を得て、彼のすべての旧蔵書の目録作成のため、資料のコピーを行い、現在これの整理中である。また、宮沢賢治が盛岡高等農林時代に作成した同人誌「アザリア」の同人で終生の友であった保阪嘉内の大正5年の短歌日記を全文翻刻し、現在遺族と協力して校正中である。これらはいずれも宮沢賢治の文学的足跡を傍証するための資料となるはずである。宮沢賢治が萩原朔太郎の『月に吠える』に接したのは、大正9年以降であるとする説が未だにある。保阪嘉内の大正5年6年の短歌の変化を確認することで、「アザリア」同人が大正6年に『月に吠える』に接していたことが明らかになる。これもその一例である。 さらに、詩稿「図書館幻想」について考察し、これに登場するダルケについては、従来保阪嘉内をモデルとしているとする説もあったが、これはドイツのp・w・ダルケのことであることを再確認し、その著書『仏教的世界観』に対する期待と落胆を描いたものであることを明らかにした(「短期大学図書館研究」21号掲載予定)。併せて宮沢賢治のもっていた図書館イメージについても考察した。 いずれも宮沢賢治の詩歌観の展開を跡づけるための作業だが、今年度は資料収集と整理が主要な作業となった。
|
Research Products
(1 results)