1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610449
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
山崎 健司 奥羽大学, 文学部, 助教授 (20192792)
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Keywords | 萬葉集の用字法 / 漢籍の用法 / 李善注文選 / 大伴家持の用字法 |
Research Abstract |
1.日本古代文献の整理 萬葉集の用字法は、かならずしも漢籍の用法と一致するものではなく、巻や作者によってさまざまな様相が見て取れる。そこで本年度は、漢籍の萬葉集の用字法に与えた影響を探るために、歌にもちいられた特定の語について、用字が複数見られるものに着目、具体的には雨・雪がフルというばあいに「零」 「落」ふたつの用字が存在し、花・葉がチルというばあいに「散」 「落」ふたつが存在することに着目して、その語を含む歌について諸本を収集、校異表を作成し、本文を確定したうえで考察を進めていった(考察の内容は3に示す)。 2.『李善注文選』の語彙収集・整理 1に並行して、我が国の古代文学に多大の影響を与えた『李善注文選』の語彙索引の作成をめざし、語釈部分について、カード収集を進め、李善注に関する最新の研究成果もカードに加えることを試みた。現在、全体の50パーセントほどまで終了している(なお、部首別に分類・整理するところまでには至っていない。) 3.漢語語彙と古代日本の文献(萬葉集)の漢字語彙の対照 1を受けて、漢語語彙と古代日本の文献に見られる漢字語彙の比較対照を行い、とくに萬葉集においてはそれぞれの分布状況を巻別・作者別に調査して、分析を試みた。 萬葉集の用字法は、かならずしも漢籍の用法と一致するものではなく、巻や作者によって独自の用法を見せているけれども、そのなかで大伴家持については漢籍の用法にほぼ合致する結果が示された。このことをふまえて巻十九の「春苑桃李の歌」第二首の 吾が園の李の花か庭爾落はだれの未だ遺りたるかも(4140) の下線部は、花チルとはだれ(雪)フルのふたつの文脈を重ねて理解すべきことが示唆された。
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Research Products
(1 results)