1999 Fiscal Year Annual Research Report
軍事制度化の文学に関する基礎的研究--一九四〇年代文学作品の被検閲事例を中心に
Project/Area Number |
11610456
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
横手 一彦 長崎総合科学大学, 助教授 (60240199)
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Keywords | 戦時期文学 / 敗戦期文学 / 一九四〇年代文学 / 戦後文学 / 検閲 / GHQ / SCAP文学 / 被占領下の文学 / 検閲事例作品 |
Research Abstract |
平成11年度科研交付申請書「研究目的」において、以下の3点を今年度の研究活動の方向軸と定め、当該研究の主課題「一九四〇年代の軍事制度下の文学」への立脚点を確立したいと考えた。A:一九四〇年代後半のGHQ/SCAP検閲の本文復元と事例研究の継続、B:一九四〇年代前半の検閲実体解明への着手、C:一九四〇年代前半の資料発掘を求めた短期渡米調査(本申請経費に直接関わらない)。 A:被検閲作品事例として、坂口安吾「戦争と一人の女」(一九四六年一〇月新生社発行『新生』)の検閲削除本文を全文復元し(紙面制約から付帯英文資料は未発表)、九八年五月筑摩書房発行『坂口安吾全集』第四巻所収作品本文の混乱を訂正し、GHQ/SCAP検閲が削除した不可視的記述(「刻印」)を踏まえた私的解釈を試みた。B:平成11年度は具体的実績として報告するに至らなかったが、次年度学会誌に拙論掲載が予定され、徳田秋聲『西の旅』 (四一年六月二十日印刷・同六月二十五日豊国社・原典は米国議会図書館所蔵旧内務省資料)及び同『一莖の花』(四一年八月二十日印刷・同九月一日有光社発行・同)所収作品について、検閲本文の確定と、戦時期検閲の動向を踏まえた作品解釈をおこなった。C:99年9月に短期渡米調査を行い、米国議会図書館所蔵旧内務省資料の蒐集に努めた。その機会に、上記の作品以外にも、幾つかの複写資料を入手した。そのデータ化と本文復元作業や周辺資料の検索を継続し、今後私論を提示したい。 これまでいわば<篋底文学>としてあった被検閲作品本文の隠微性を資料に拠って排除し、その本文箇所を明確にする作業を量的に蓄積し、強烈な抑圧や過重な負荷が加わった一九四〇年代文学の特殊性と制度化された言葉をそこに考える。こられによって、<世界戦争期文学>と再概念化することで、現時の私たちの在り方の過不足を論究する研究性格を追求したと考える。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 横手一彦: "敗戦を語ることば"平和文化研究. 22. 27-35 (1999)
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[Publications] 横手一彦: "戦時期文学と敗戦期文学と-坂口安吾「戦争と一人の女」"昭和文学研究. 39. 89-100 (1999)
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[Publications] 横手一彦: "無条件降伏論争,占領軍による検閲問題"研究資料現代日本文学第二巻所収. 342-343 (2000)
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[Publications] 横手一彦: "検閲"国文学-解釈と鑑賞別冊坂口安吾辞典. (2000)