1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610465
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅見 洋二 大阪大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (70184158)
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Keywords | 詩 / 詩学 / メディア / 標題 / 歴史 / 中国 / 唐 / 宋 |
Research Abstract |
詩は、文学的芸術作品であると同時に、人と人、人と世界を結ぶ情報伝達のメディアとしてもとらえられる。本研究は、中国唐宋期における詩を、文人間の情報伝達のメディアのひとつと位置づけ、特にその受容・交換の在り方を解明するとともに、それに関連する詩学認識上の諸問題について考察することを目的とする。 上記の研究の一環として、今年度は、次にあげる二つの課題について研究を行った。 1,唐宋期における詩の標題に関する研究。詩の交換・受容にあって、標題はどのような役割を果たしていたのか。また、果たすと認識されていたのか。この点について、宋代に盛行する「著題」をめぐる議論を中心にとりあげてその系譜学的検討を行った。この成果は「標題の詩学-沈約、王昌齢、司空図、そして宋代の『著題』論を結ぶもの-」と題する論考として公刊予定である。 2,唐宋期における詩と歴史記述の関わりに関する研究。歴史書というものがもつメディアとしての性格と、詩がもつそれとは、どのような関係にあると認識されていたのか。主に「詩史」観をめぐる議論をとりあげて考察した。この成果の一部は、第51回日本中国学会(1999年10月)において口頭発表を行った。「詩史」観については、さらに宋代における文人年譜・編年文集の編纂との関わりをも視野に入れた論考を準備中である。 以上の研究によって、唐宋期における詩学認識の特質の一端を明らかにするとともに、メディアとしての詩の交換・受容の在り方を総合的に考察するための第一歩を踏み出すことができた。
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