1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610469
|
Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
丸山 浩明 広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (00239162)
|
Keywords | 石印版小説 / 近代小説 / 清末民国期 / 上海書局 |
Research Abstract |
本年度については、中国における石印版小説の目録作成を中心に作業に取り組んだ。まず孫楷第・阿英・鄭振鐸等近代の書誌学者の記録に基づき、且つ清末民国期の小説を対象とした樽本照雄の目録その他を広く利用して、石印版小説の概要が了解できる程度の目録を第一段階として作成した。その結果、以下の二点が明らかとなった。一つは出版年全体を通して三つの高潮期(1888光緒十四、1893〜1895光緒十九〜二十一、1908〜1914)が存在すること。もう一点は出版社が上海の四社(上海書局・上海広益書局・上海錦章図書局・上海会文堂書局)に集中していることである。しかし、実物に当って直接確認する作業は容易には進まず、とりわけ異名を有することが知られる同一書については内容の検討等をも含めて多くの課題が残された。さらに本学では大学院の開設準備年に当ったため、予定された中国での実地調査が実現できなかったことは残念である。 もう一方で、近年刊行された『近代文学大系』や『二十世紀小説理論資料』等を手掛かりに、近代小説形成の理論展開に見られる古典評価との関わりを考察する資料の収集にも努めた。石印版小説の出版と所謂新小説の発行との明確な相関関係は未だ見出せないものの、近代小説の形成において古典小説再評価の潮流が与って力あったことは収集した資料からも予想され、石印版小説の普及と併せて二年目の考察の中心に据えていきたい。
|