2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610469
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Research Institution | Hiroshima Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
丸山 浩明 県立広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (00239162)
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Keywords | 石印版小説 / 近代小説 / 清末民国期 |
Research Abstract |
本年度については、十九世紀末より二十世紀初頭にかけて雑誌類に発表された西洋的小説理論の展開と古典小説に対する評価の記事とを整理することを主眼とした。近年出版された『近代文学大系』や「二十世紀小説理論資料」等を手掛かりに、梁啓超の小説理論、黄摩西の小説批評などに注意しながら、近代小説形成の理論展開に見られる古典評価との関わりの資料を去年に引き続いて収集した。この作業では、作品自体に付けられる序跋ではなく、鳥瞰的意味での現代的な文学評論がすでに成立している事実を確認でき、古典小説再評価の実態がおおよそ把握できた。また、評論史の面からも西洋小説理論導入に際しての取り組みが少しは理解できた。この古典小説再評価の実態が石印版小説の流行にどのような関係を持ったかが研究のテーマであるが残念ながら未だ新たな知見は得られていない。 しかし、昨年度作業の中心に据えた石印版小説の目録との関係から言えば、仮に石印本の形態を大雑把に四種(1中型多冊本型・2新書多冊本型・3新書文庫本型・4小型袖珍本型)に分けるとした場合、長編の内容を有する古典小説は1型に、清末から民国時期の小説はほとんどが2または3型に属すると判断された。特に3型は近代小説の単行本出現に際しての準備体となったのではないかと想定している。また4型は2型の縮小版が多いのではないかと思っている。この点は近代小説形成の視点を絡めて来年度まとめてみたい。 また、予算請求はしていなかったものの、3月末に韓国で中国古典小説に関わる研究会が開能されるので、この石印版小説の研究の一端を紹介してくる予定である。
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