1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610479
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 文芸・言語学系, 助教授 (40151667)
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Keywords | ブレイク / 血液 / セクシュアリティ / 複合芸術 / ファクシミリ版 / 腰 / 社会 / イギリス |
Research Abstract |
二年計画の本研究の一年目には、ブレイクの複合芸術(イラストつきの詩作品)において頻出する血液が、どのような意味を付与されているかを分析した。 ブレイク作品における血液は、第一に、社会の犠牲者や反逆者たちが流すものである。それについては、従来のブレイク研究者たちがすでに多くの研究書を著している。しかし、ブレイクにおける血液が、そうした社会的な意味のほかに、とてもセクシュアルな意味をもっていることは、これまで不思議なくらい着眼されなかった。 じつは、ブレイク作品における血液はセクシュアリティと深く結びついている。なぜなら、血液は性器の場所とされる腰から噴き出し、その血液の塊が人間として誕生するからである。また、夫と妻は血管をつかみ合うことでセックスを行っているからである。また、血液はときには精液にすり替わる。 ブレイクのファクシミリ版を用いて具体的な詩行やイラストを分析しながら、ブレイクの血液がセクシュアルなものであることを実証できたと思う。こうした血液の描写は、十八世紀イギリスにあってかなり特異なものと思われるが、二年目の研究目的が、その十八世紀という時代の血液をめぐるディスコースとブレイクの血液のイデイオムをつき合わせて、ブレイクの血液の特異性を明確にすることである。
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Research Products
(1 results)