1999 Fiscal Year Annual Research Report
英文学における「古典」の言説に関する表象文化論的考察
Project/Area Number |
11610486
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 康成 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10116056)
|
Keywords | セネカ / 古典 / ルネサンス / ストイシズム / パードヴァ / プロト・ルネサンス / ムッサート / エチェリーノ |
Research Abstract |
セネカ悲劇の言説について。英文学では、そのルネサンス期である15世紀中葉に、所謂「セネカ型悲劇」のモデルがヨーロッパ大陸から輸入され、その模倣が行われたとされる。それを跡付ける研究は今世紀の初頭より多くなされ、第二次大戦後も、新たな検討が続けられてきた。それらを受けて、本研究の第一年度における成果としてあげられるのは以下の2点である。(i)イギリスルネサンスにおける「セネカ悲劇」の影響研究としては、所謂「ストイシズム・リバイバル」との関係の考察が不可欠であること。(ii)そもそも「セネカ型悲劇」のモデルといった場合、それが如何なるものかが、従来の研究では手薄であったこと。後者の点は、「セネカ悲劇」のイタリア・ルネサンスにおける復活の際に、二つの流れがあったことを確認することが重要である。第一は、15世紀のローマを中心とした再興の動きであり、いまひとつは、14世紀バードヴァを中心とした復活の胎動である。そこで、本年度の実質的中心課題としては、所謂「プロト・ルネサンス」と呼ばれる14世紀パードヴァにおけるセネカ復興の代表例というべきアルベルティーノ・ムッサートの『エチェリーノの悲劇』を検討してみた。その一大特徴である、政治的イデオロギー性、主人公原理の拡散、歴史的現実との絡み、などは英国初期の「セネカ型悲劇」と類縁性をもつと考えられるが、この点に関しては更なる検討が必要とされる。
|