1999 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス・ルネサンス期の作家の主体構成のプロセスの解明
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11610492
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高田 茂樹 金沢大学, 文学部, 助教授 (40135968)
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Keywords | イギリス・ルネサンス / 宗教改革 / 作家主体 / シェイクスピア / 『ジョン王』 |
Research Abstract |
本年度は、あらかじめ予定していた研究のうち、シェイクスピアと彼の同時代の作家たちを取り巻く社会的、文化的な環境を探るための一次的ならびに二次的資料の充実・強化を目指し、とりわけ、現在英米の研究者のあいだで最も大きな関心ごとの一つになりつつある、16世紀前半の宗教改革から17世紀中葉の内乱に至る当事のイギリスの宗教界の状況と政界や劇壇との複雑な相互作用を解明するための資料の収集と、基礎的研究に努めた。こういった問題は、研究の性格上、短期のうちに全ての結果が出るといった体のものではないが、主要な一次資料に当たるとともに、特に注目に値する二次的資料を精力的に検討することを通して、かなりの程度明確な見取り図が得られたと自負しており、その一端は、それ自体としては短い論文であるが、日本シェイクスピア協会発行の機関誌に「宗教の復権の時代に」という論題で、今春発表することになっている。 また、こういった背景的な研究と並んで、そういった状況が作家の主体のあり方や創作過程にどう関わったのかという問題-実際には状況と主体は明確に二つに区別できるものではなく、また区別すべきものでもないが、一応便宜的に分けておく-にも取り組み、その具体的な例として、最初の計画に沿ってシェイクスピアの戯曲『ジョン王』を取り上げて、その粉本、同時期の競合する他の作家による同じ主題の戯曲、創作当事の政治や社会の状況や、ロンドンの劇壇の状態、さらには、シェイクスピアが属していた劇団の中での彼の立場や作風の変化といったことが、この作品の具体的内容とどう関わりあっているのかということの解明に努めており、その成果の一部は、2000年10月に開催される第39回日本シェイクスピア学会で持たれる『ジョン王』に関するパネル・ディスカッションで、パネラーとして発表する予定である。
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