1999 Fiscal Year Annual Research Report
R.W.エマソンの「超越主義的」思想の成長、展開と19世紀アメリカ社会
Project/Area Number |
11610513
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
高梨 良夫 長野県短期大学, 文学科, 助教授 (50163225)
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Keywords | エマソン / 超越主義 / ピューリタニズム / ユニテリアニズム / ロマン主義 / 進化論 / 自然 / 経験主義 |
Research Abstract |
まず第一に、エマソンの「超越主義的」神概念の形成と発展について考察した。エマソンが1838年に行なった「神学部講演」が、ユニテリアン牧師の陣営からの激しい反発を招いたのは、その内容に正統的なキリスト教の教義から離脱する「超越主義的」な部分があったこと、またエマソンの神概念が、人格的な"Father"ではなく超人格的な"Law"になっていったこと、を原典に基づいて明確にした。さらにエマソンの超越主義的神概念は、「自己」に内在する神であると同時に「自己」から超越する神でもある「大霊」(the Over-Sou1)と呼ばれる神概念に、さらに後年には、超越主義的自然観から進化論的自然観に変化してゆくにつれて、「自己」中心主義からも脱却してゆき、大自然の最奥部に生命の流動と生成を認める、「慈愛に満ちた動き」(Beneficient Tendency)と呼ぶことの出来るものへと発展していった過程を追跡した。 第二に、エマソンの「歴史的」・「正統的」キリスト教から離脱という問題を、彼の時間概念の変化という視点から考察した。まず時間の束縛からの人間の解放を希求していた、超越主義思想を展開した青年時代には、エマソンは時間の歴史性を拒絶し、直接的現在性を主張したことを明確にした。そして終末に向かって直線的に進行する正統的なキリスト教の「経過」としての時間概念から離脱した、「永遠の今」という超越主義的な時間概念は、「円環」というエッセイに最も良く示されていることを見いだした。これは円周の循環を繰り返すのではなく、絶えず形成と消滅の運動を繰り返す「自己進化」する円環である。さらに後年エマソンが自然流動思想を受け入れたことによって、彼の時間概念が、万物の変化流転を認める「流れとしての時間」と呼べるものに移行していった過程を追跡した。
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