2001 Fiscal Year Annual Research Report
R.W.エマソンの「超越主義的」思想の成長,展開と19世紀アメリカ社会
Project/Area Number |
11610513
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
高梨 良夫 長野県短期大学, 文学科, 教授 (50163225)
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Keywords | エマソン / 超越主義 / ロマン主義文学 / 自然 / 朱子学 / 陽明学 / 朱熹 / 王陽明 |
Research Abstract |
本年度の研究の目的は、年度始めの計画では、(1)エマソンの自然観、宗教観、倫理観について、特に陽明学、朱子学との比較思想的視点から考察し、類似点、相違点を明確にする。(2)エマソンの特に後期の思想の展開とプラグマティズムとの関連を明確にする。(3)エマソンの思想と当時のアメリカ社会との関連について考察する、の三点にあったが、結果的には特に第一点についての研究が中心となった。 平成12年度までの、エマソンの思想と陽明学、朱子学との類似性についての研究を英文にしてまとめて、アメリカの学術研究誌ESQ : A Journal of American Renaissance(ワシントン州立大学出版局発行)に投稿したところ、編集者及び審査委員の教授から「エマソンの作品の国際的受容の研究に重要な貢献をするもの」という拙論の価値を高く認める評価を受け、ESQ誌に掲載されることが決まった(別紙資料参照、掲載時期は未定)。そこで今年度の後半は最終原稿を完成するための作業に多くの時間を費やすことになった。 修正、加筆作業を通じて、日本の明治、大正、昭和時代におけるエマソンの受容(徳富蘇峰、北村透谷、戸川秋骨、平田禿木、岩野庖鳴、山路愛山、高安月郊などを中心にして)、中国の宋代以降における新儒教の形成と展開(宋代の朱子学、明代の陽明学など)、日本の江戸、明治時代以降における新儒教の受容と展開、ヒンズー教、仏教、儒教などの東洋思想とエマソンとの関係、陸象山、王陽明とエマソンとの類似性、朱熹の教義とエマソンの思想との類似点と相違点などに関するこれまでの研究をさらに一層綿密に探究し、深めることになった。 また本研究に対する貴補助金の直接の成果ではないが、数年来の訳業の成果である拙訳書、ステイーヴン・E・ウィチャー著『エマソンの精神遍歴-自由と運命」(南雲堂)を平成13年4月に上梓したことも付記しておく。
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[Publications] 高梨良夫: "Emerson, Japan, and Neo-Confucianism"ESQ : A Journal of American Renaissance. (掲載予定). (2002)
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[Publications] スティーヴン・E・ウィッチャー著, 高梨良夫訳: "エマソンの精神遍歴-自由と運命"南雲堂. 318 (2001)