1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610514
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 淳二 北海道大学, 文学部, 助教授 (30282544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
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Keywords | フランス文学 / ディスクール分析 / 身体 / ロマン主義 / ルソー / 18世紀フランス / 主体 / ネルヴァル |
Research Abstract |
今年度の当基盤研究においては、二つの大きな研究の進展が見られた。一つは、研究分担者である東京大学大学院の田村教授が、長年のネルヴァルの語彙研究の成果を踏まえて、ネルヴァル全集第4巻を刊行したことであり、更に続刊の準備を当研究の関連において、ネルヴァルの幻想における身体イメージとの関わりを明らかにする作業を進めたことである。また今一つの成果は、研究代表者の北海道大学文学部の佐藤助教授が、18世紀研究とりわけルソー研究における「身体」論の新しい展望を開いたことである。この展望は、これまで省みられずにいたルソーの断片的作品の重要性を発見し、それを本格的に分析した業績(「身体/主体/記号:ルソー『ルクレチアの死』、『フランス研究』2号)において示されている。ルソーにおける「身体」という問題はどのようなものであろうか。「身体」は、極めて唯物的物理的に把握されているのであるが、この物理的な所与としての「身体」から差異を生じさせるのがルソーに独特な「自由」概念である。この身体との差異性を、ルソーが最初に形象化を試みたのが、未完成な断片である『ルクレチアの死』であった。そこでは自死したルクレチアの悲劇と、蜂起したローマ市民の想像力を媒介にした関係が、「身体」の記号性を軸にして象徴化されているのである。この点で、「身体」と「ディスクール」とは、文学テクストと性差(ジェンダー)、そして政治性との相関の結節点として重要な分析視点となったのである。 佐藤研究代表者は、この観点をさらに深化させて、継続2年目においては、身体とディスクールの関係を分析する手段として、特にフランスで重視されている記号論と精神分析の知見・方法論を批判的に分析する予定である。題材は再びルソーとなるが、「身体」を西洋にディスクールの中に初めて本格的に登場させた彼の自伝作品を中心とした研究となる予定である。
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Research Products
(2 results)