2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610515
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
三井 吉俊 千葉大学, 文学部, 教授 (00157546)
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Keywords | ジャン・メリエ / キリスト教神学教理反駁 / 三位一体論 |
Research Abstract |
Alain Mothu(Paris IV)氏との討議、共同調査などから、ジャン・メリエにおける神学教理反駁の実態の一端が明らかになった。キリスト教主要教理の一つである三位一体について、メリエは多産の自然学的事例と神の全能から、神の子の多数性こそより合理的とし、キリストの一人子という教理を反駁する。この特異な三位一体批判は、当時における自然科学的知識の進展をも歴史的批判意識をも欠落させた、一年の日数もの子を出産した女性の例などの自然学的報告を無批判に利用して組み立てられている。しかしこれは、通常考えられるように、メリエが農民的心性を論証に当たって存続させていたからではない。上記のような報告例は、17世紀を通じて医学書、民衆的読み本などに継続して受け継がれてきた伝統を有し、メリエはそれを比較的古いタイプの神学的論証形式に適用したにすぎない。その点では、確かに新しい自然学的・歴史的批判意識はメリエに欠落していると言うことができ、その論証は古い素養を持つ学者・神学者のそれである。他方で、メリエより少し後に成立したと思われる哲学的地下文書『創造された無限』には、宇宙におけるキリストの数多性という主張が見られる。これはフォントネル『世界の数多性について』を敷衍し、無数の世界から成る無限の宇宙を主張する小論であるが、ここにみられるのはキリスト教の基本教理三位一体論の決定的な地盤沈下現象である。メリエの反三位一体論は、この基本的神学教理の一般的な沈下現象を背景にするとき、そのアルカイックな論証法と反宗教の徹底性によって特徴づけられる。
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Research Products
(1 results)