1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂原 茂 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40153902)
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Keywords | 変化述語 / 認知プロセス / 解釈 / 仮想的変化 / 認知意味論 / メンタル・スペース / プロトタイプ / 自然言語 |
Research Abstract |
変化述語のさまざまな解釈と,それを引き起こす要因を明らかにすることで,われわれの認識方法が,どのように外界の認識を決定し,かつそれがどのように言語に反映するかを,メンタル・スペース理論に基づいて研究した.この過程を通じて,単に変化述語の意味論だけでなく,一般的に名詞句の多様な解釈を生み出すメカニズムも研究した. 具体的には,以下の例に関して,さまざまな意味論的アプローチの可能性を考察した. Chaque annee,Proust devient plus facile. Proustの著作はすでに書かれてしまっており,それ自身が変化して,年々易しくなることはあり得ないのに,なぜ,変化がProust自身の変化であるかのように表現できるのか.これは,Proustを読む人の理解力があがったために(フランス語の読解力が上がった,人生経験が豊富になった,文学についての理解が深まった,など),相対的にProustを読む困難が減じるということである.ところが,その変化は,あたかもProustの著作自体の変化であるかのように表現されている.変化の主たる要因は,判断主体の内的なものであるにもかかわらず,それが主体の外に存在する対象の変化であるかのごとく表現されている.言語は外界をそのまま写す鏡などではなく,われわれの世界に対する認識,情報処理が色濃く反映されており,そうした認知プロセスを基礎にして,このような表現方法が可能になっているのである.こうした表現を可能にする解釈とはいかなるものであるかを,変化のプロトタイプ的類型を仮定し,研究した.
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Research Products
(1 results)