2000 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける社会学的コミュニケーション理論の転換とその影響に関する研究
Project/Area Number |
11610524
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 純一 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (30216395)
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Keywords | コミュニケーション論 / システム論 / 異文化コミュニケーション / ダブル・コンティンジェンシー / ルーマン |
Research Abstract |
研究計画に従い、本年度は、ドイツにおける新しい社会学的コミュニケーション理論の中核をなすシステム論的コミュニケーション・モデルをいくつかの領域に適用し、その有効性を検証することに力点を置いた。その結果、まず明らかになったことは、このモデルが異文化接触・交流のメカニズムを解明するのに極めて優れた分析視点をもたらすという点である。共通する言語的・文化的コードをもたない異文化間でコミュニケーションが発生し、相互理解へと進展するためには、それぞれの文化が相手の文化の未知なもの(自文化において未だコード化されていないもの)を何らかの方法で自文化のコードに転換させつつ理解していく必要がある。その過程は、ルーマンのコミュニケーション・システム・モデルを用いることによって、ダブル・コンティンジェンシー理論における偶然性の相互取り込み過程として論理的に分析することが可能である。さらにこの過程は、明示的な異文化間コミュニケーションのみならず、一般のコミュニケーション現象においても、トートロジーを回避しつつ他者を自己言及的に理解する過程を原理的に説明するモデルとしての可能性を持っており、その具体的な検証として、ディスクール論およびレトリック論の領域における分析を現在続行中である。また、この分析は、従来のコミュニケーション行為論において中心的なテーマとなっていた合理的合意形成機能をシステム論的に新たに捉え直し、より広範囲な領域に適用可能な合意形成過程の分出に寄与することが予想される。
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