2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610527
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 研二 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (60114120)
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Keywords | オーストリア小説 / 父の言説 / 愛の言説 / ムージル / リルケ / 全体性 / 物語と歴史 / 精神分析 |
Research Abstract |
20世紀オーストリアの小説の作家、ムージル、リルケ、ホフマンスタール、ブロッホの文献の収集に努め、またムージルの作品の電子化を進めた。『特性のない男』を大まかに電子化している。 作品分析については、ムージルの『特性のない男』とリルケの『マルテの手記』について論文を準備中である。ムージルの作品については、20世紀ドイツ語散文において占める位置を明らかにするために、マルクス主義と精神分析との関係を検討した。とくに晩年のパリ公演を手がかりとして、レーニン、ルカーチの思想との関連を明らかにした。ムージルと、レーニン、ルカーチの立場の違いは、精神分析によって揺るがされた「主体性」の問題に焦点をあわせることで明らかになると考えられ、フロイトとラカンの思想との対比が行われた。この成果は、ドイツ語の論文としてまとめられる予定である。 以上の成果を含め、本研究の成果は、「偉大なオーストリア小説」をキーワードとする一連の論文にまとめられている。ドイツ語論文の概要は、冊子体の報告書で日本語でも読めるようにまとめた。これは19世紀オーストリア小説の伝統と、20世紀オーストリア小説の関係を明らかにし、それが「父の言節」に対抗するものとして新たな発展を見せたことをムージルを中心にまとめたものである。しかし、文学作品だけではなく、マッハ、ヴァイニンガー、フロイト、フッサール、レーニン、ルカーチ、ラカンなど、20世紀の思想の文脈において、ムージルの作品の位置付けを試みたものであり、あくまで「かのようなもの」の領域にとどまろうとした、ムージルの散文の意義が、「近代のドイツ語散文」というより包括的な視点から明らかにされている。
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[Publications] 原 研二: "偉大なオーストリア小説(4)-フェルディナント・フォン・ザールと「モデルネ」の散文"東北大学文学部研究年報. 49. 111-142 (2000)
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[Publications] 原 研二: "偉大なオーストリア小説(5)-ローベルト・ムージルと物語への試み-"東北大学文学部研究年報. 50. 37-70 (2001)
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[Publications] Hara Kenji: "Nachwort des Herausgebers"人形芝居. 8. 105-109 (2001)