2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610530
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高橋 義人 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70051852)
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Keywords | ゲーテ / E・ヘッケル / ディルタイ / カッシーラー / レヴィ=ストロース / ギンズブルグ / 分子生物学 / 形態学 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀末から今日までのゲーテ自然科学の受容史を探りながら、現代における科学のあり方を再考し、「自然科学と精神科学」の関係に新しい照明を当てようとするものである。19世紀に自然科学の力が強くなり、文系の諸科学に圧迫を加えるようになった頃、ゲーテ自然科学は自然科学と精神科学を媒介するもの、自然科学のあり方に反省を迫るものとして注目された。 ダーウィン進化論をいち早く受容したへッケルは、ゲーテとラマルクこそ進化論の先駆者だと見なすとともに、ゲーテ形態学を強引に解釈して、植物と動物はもともと一つである、精神と物質は一つであるという一元論を展開した。 ディルタイは一元論に反対し、自然科学とは異なる方法論を持つものとして「精神科学」を提起した。しかしそうして両者をいったん区別した後で、彼はゲーテの形態学的方法をもとに、両者を統合する「有機的な学」を目指した。 カッシーラーは、ゲーテ形態学に依拠しつつ、人間の認識のなかに、近代科学的な「抽象的思考」とは異なる「具体的思考」があることを明らかにすることによって、近代科学を包摂し、かつそれを乗り越える学を構築しようとした。 レヴィ=ストロースもカッシーラーと同様、近代的な「抽象的思考」とは違った「具体的思考」を「未開民族」のうちに探った。しかも彼はその構造主義的方法をゲーテ形態学から学んだと再三にわたり言明している。 西欧のなかの非西欧的なものに注目しながら、西欧史の「もう一つの系譜」を浮かびあがらせようとしたギンズブルグも、ゲーテ的な形態学に依拠した。 20世紀後半では、分子生物学者たちがゲーテ形態学にしばしば言及している。彼らは、ゲーテが詩「オルペウス教に倣いし原詞」の中に記した「生成し発展してゆく刻印された形相」のうちに彼らのDNAを再発見したのである。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] 高橋義人: "科学的真理と生活世界の真理-ゲーテ生誕250年に寄せて"京都大学『人環フォーラム』. 6号. 32-37 (1999)
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[Publications] 高橋義人: "悪魔と実存"理想社「実存主義」. XIV巻. 5-26 (1999)
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[Publications] 高橋義人: "ファウストcontra悪魔の科学"新潮社「新潮」. 12月号. 204-21* (1999)
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[Publications] 高橋義人,柴田翔: "対談・世紀末の現代にゲーテを読む"岩波書店「思想」. 12月号. 54-78 (1999)
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[Publications] 高橋義人: "法則か現象か-〈自然の表情学〉としてのゲーテ色彩論"岩波書店「思想」. 12月号. 5-25 (1999)
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[Publications] 高橋義人: "ナチズム前夜のフリッツ・ラング"東京国立フィルムセンター「NFCニューズレター」. 30号. 3-4 (2000)
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[Publications] 高橋義人: "悪魔と契約するには型がある"工作舎「形の文化誌」. 7号. 246-247 (2000)
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[Publications] Yoshito Takahashi: "Reiz und Ratsel des "Faust""Goethe-Jahrbuch (Goethe-Gesellschaft in Weimar). 116. 85-95 (2000)
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[Publications] 高橋義人: "ゲーテの〈生き生きとした〉視覚論-from the lightからon the lightへ"TASC社「談」. 64. 33-46 (2000)
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[Publications] 高橋義人: "辻邦生とドイツ文学"日本独文学会「ドイツ文学」. 105. 222-224 (2000)
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[Publications] 高橋義人,森田孝,丸山高司,舟山俊明,牧野英二: "座談会・ディルタイと現代"理想社「理想」. 666. 2-29 (2001)
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[Publications] 高橋義人,前田富士男,南大路振一,嶋田洋一郎,中島芳郎(訳): "ゲーテ『色彩論』全3巻(完訳版)"工作舎. 1420 (1999)
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[Publications] 高橋義人: "『色彩論』教示篇解説(ゲーテ『色彩論』第一巻)"工作舎. 20 (1999)
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[Publications] Yoshito Takahashi: "Yukio Mishima und Goethe, In : O.Gutjahr (Hg.) : "Westostlicher und nordsudlicher Divan""Schoningh (Germany). 211-219 (2000)