1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610532
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島谷 謙 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00243519)
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Keywords | ドイツ文学 / 亡命文学 / ナチス / 第三帝国 / エルンスト・トラー |
Research Abstract |
本研究はナチス政権時代の作家、芸術家達の生涯と活動の軌跡、作品と社会状況の相互関連を学際的に究明、考察することを目的とする。作家や芸術家達は時代と社会の観察者であり、また表現者である。従って、彼らの表現内容を考察することがナチス政権時代の社会や文化を考える上で不可欠である。ナチス反対者の多くはナチスの政権獲得後、国外に亡命したが、その後の生涯は亡命先の国々の政治的、社会的状況に大きく左右された。国外亡命者の生涯と活動の解明において、各作家が亡命先の国へ辿り着いた経緯、移住先での生活環境、その国とナチスとの関係の変化、異文化間交流の実態、生み出された作品の分析といった各要素を考察する必要がある。 クラウス・マンはフランスを経てアメリカ亡命後、多くのドイツ人亡命者達と交流した。そして、国会放火事件以降のドイツをめぐる動きと、亡命者の欧米での生活と交流に関する貴重なドキュメント(未邦訳)を執筆した。また、反ナチ運動の中心にいた劇作家E.トラーの妻クリスティアーネの自伝的文章が近年公刊され、作家トラーの知られざる姿が明らかになった。今年度はそうした本や各国における亡命者の実態に関する資料を複数読み、研究の足がかりとした。 研究の一端は新聞の書評等に示した。今後さらに個別の作家、芸術家の研究を進めるかたわら、前提となる社会史的研究を並行して行い、総合研究の体裁を整える。平成12年度はスイス等における亡命者受け容れをめぐる対応の内実をとらえ、G.カイザー等亡命作家の作品を考察する予定。
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Research Products
(2 results)