2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11610536
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Research Institution | KUMAMOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森 光昭 熊本大学, 法学部, 教授 (70019321)
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Keywords | 正書法 / ドイツ語 / 表記法 / 住民投票 / 作家 / 言語改革 / 正書法改革 |
Research Abstract |
1998年8月1日に導入された新正書法は、住民投票で旧正書法に止まることを決定したシュレスヴィヒ・ホルシュタインレ州も1年後の1999年秋、その採用に踏み切った。この1999年にはマスメディアも新正書法に切り換え、正書法改革が学校と官庁の枠を越えて広がりをみせることになった。いよいよその全ドイツ的定着の条件が整ったのである。 DudenとBertelsmannの両出版社からの辞書の新版も、当初指摘された多くの相違点の解消に役立つものと期待された。ドイツ語正書法国際委員会の委員長は、新正書法は一般に受け入れられているとの認識を示していた。 ところが、2000年8月、ドイツを代表する新聞のひとつフラクフルト・アルゲマイネ紙が、新正書法は1年間使ってみたが問題が多すぎるとして、旧正書法への復帰を宣言、新正書法を破棄した。著名な作家、学者、言論人の多くがこの新聞社の姿勢に対して支持を表明している。もともと問題のある改革であっただけに、言論界に大きな力を有するこの新聞社の「反乱」は、今後大きな影響を持つと推測される。世論調査でもドイツ人の圧倒的多数が新正書法の撤回を求めている。その数は68%にのぼる。新正書法の賛成者はわずか27%である。75%のドイツ人が日常生活では旧正書法を使っている。自ら新正書法を使っている人は僅か22%である。反対者の比率は、改革に対する反対運動が起こった数年前と大差ない。いかに一般の人々に人気のない改革であったかが分かる。今後、新正書法は実質的に言わば骨抜きにされると予想される。
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