2000 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ・オーストリアにおける最近のメッセージソングのテキスト研究
Project/Area Number |
11610538
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Research Institution | CHUO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高橋 慎也 中央大学, 文学部, 助教授 (60171493)
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Keywords | メッセージソング / ポップカルチャー / サブカルチャー |
Research Abstract |
平成12年度は、1970年代から現在に至るオーストリアのメッセージソングのテクスト研究を中心として進めた。ダンツァー、アンブロス、フェンドリッヒ、シュメッターリンゲなどのオーストリアの代表的なソングライターのCD、LP、歌詞集を購入し、テクストと音源のデータベース化を進めた。歌詞のデータベース化の際には主にOCRソフトを用い、音源のデータはMP3化して保存した。主要なメッセージソングには日本語訳を付けていった。さらに2次文献を購入し、オーストリアのメッセージソングの特徴を分析した。 上記の作業の結果、1990年代の半ば以降、70年代に登場したメッセージソングのシンガーたちが再び人気を博してきたことが確認できた。しかしその一方で、新たなメッセージソングの台頭が弱いことも分かってきた。こうした現象が生まれた原因としては、1990年代にオーストリア国民に広がった一種の「懐古趣味」が挙げられる。この「懐古主義」はオーストリアの文化シーン全体に見られる傾向であり、メッセージソングも70年代懐古のひとつの対象としてオーストリア国民によって受容されていることが推測できる。 全体としてみるとドイツとオーストリアのメッセージソングは1990年代に、国民的同一性の不安定化に伴って生じた新たなテーマを取り上げた一方で、国民の間で広範な支持を得ることができないでいることが分かった。90年代にはヒップホップやラップ系の歌手によるメッセージソングが生まれたが、そのメッセージには政治性が薄くなっている点も確認できた。 本年度はまた、メッセージソング研究を授業に取り入れる取り組みも継続した。その際には、言語、画像、音声からなるハイパーテクストを執筆する作業を導入した。
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Research Products
(1 results)